コラム

これまでの連載で、企業価値を高める方法として、「事業の収益性の向上」「投資効率の最適化」「財務状況の見直し」「無形資産の把握と活用」「仕組み化」「経営理念、パーパス、ビジョン、ミッション等の言語化」「人員の再配置と最適化」「業務フローの構築」「業務マニュアルの整備」「コスト削減」について解説してきました。本稿では、マーケティング戦略の立案と実行について解説していきます

◆これまでの連載記事
【連載】売却できる会社に育てる方法⑭ コスト削減 
【連載】売却できる会社に育てる方法⑬ 業務マニュアルの整備
【連載】売却できる会社に育てる方法⑫ 業務フローの構築
【連載】売却できる会社に育てる方法⑪「人員の再配置と最適化」の注意点と手順
【連載】売却できる会社に育てる方法⑩「人員の再配置と最適化」の目的とメリット
【連載】売却できる会社に育てる方法⑨ 経営理念、パーパス、ビジョン、ミッション等の言語化
【連載】売却できる会社に育てる方法⑧ 仕組み化の手順と方法
【連載】売却できる会社に育てる方法⑦ 仕組み化のメリット
【連載】売却できる会社に育てる方法⑥ 無形資産の把握と活用
【連載】売却できる会社に育てる方法⑤ 財務状況の見直し
【連載】売却できる会社に育てる方法④ 投資効率の最適化
【連載】売却できる会社に育てる方法③ 事業の収益性向上のためのブランディング
【連載】売却できる会社に育てる方法② 事業の収益性向上のための社内連携強化
【連載】売却できる会社に育てる方法① 事業の収益性向上のための施策

 


【マーケティング戦略とは】

マーケティング戦略とは、会社が自社の商品やサービスを市場に投入し、販売・流通・販売促進などを行うための計画のことです。マーケティング戦略を立案する際には、まず自社の強みや弱み、ターゲット市場、競合他社などを分析する必要があります。分析を基に、自社の商品やサービスの優位性を打ち出し、ターゲット市場に訴求するマーケティング戦略を策定します。マーケティング戦略は、会社の経営目標を達成するために重要な役割を果たすでしょう。

マーケティングを異訳すると、「売り込まずに売れる状態をつくること」です。社長や営業社員の属人的な営業テクニックに頼らず、ゴリゴリと押し売りするような営業をせず、顧客が納得したうえで「買い上げてくれる」のがマーケティングの目標とも言えるでしょう

 


【マーケティング戦略の立案手順】

マーケティング戦略の立案手順は、以下のとおりです。

 

立案手順①「現状分析」

 

現状分析では、自社の強みや弱み、ターゲット市場、競合他社などを分析します。自社の強みや弱みは、自社の商品やサービス、財務状況、人材、組織体制などから分析すると良いでしょう。ターゲット市場は、自社の商品やサービスを販売したい顧客層を明確にします。競合他社は、自社と同じ商品やサービスを販売している企業を分析しておきます。

 

 

立案手順②「ターゲット市場の設定」

 

ターゲット市場の設定では、自社の商品やサービスを販売したい顧客層を明確にします。ターゲット市場を設定することで、自社の商品やサービスの優位性を打ち出し、ターゲット市場に訴求するマーケティング戦略を策定することができます。

 

 

立案手順③「マーケティングミックスの策定」

 

マーケティングミックスの策定では、4P(Product、Price、Place、Promotion)を組み合わせて、自社の商品やサービスを市場に投入する方法を考えていきます。Product(商品)では、自社の商品やサービスの特徴や価格などを決定し、Price(価格)では、自社の商品やサービスの価格を決定します。Place(流通)では、自社の商品やサービスを販売する場所やルートを決定していき、Promotion(販売促進)では、自社の商品やサービスを販売するためのプロモーション活動を計画します。

 

 

立案手順④「マーケティング戦略の実行」

 

策定したマーケティング戦略を実行します。マーケティング戦略を実行する際には、ヒトモノカネ・情報・時間などの自社の経営資源を有効に活用する必要があります。

 

 

立案手順⑤「評価と改善」

 

マーケティング戦略の効果を評価し、必要に応じて改善を行います。マーケティング戦略の効果を評価する際には、売上や顧客数などの指標を分析します。マーケティングの内容によりますが、週次、月次、Q毎など、評価サイクルを決めておくと良いでしょう。

 


【マーケティング戦略の立案で活用できるフレームワーク】

前述の「マーケティングミックスの策定」では4P分析をご紹介しましたが、他にもマーケティング戦略の立案で活用できるフレームワークがあります。ぜひ参考にしてみてください。

 

◆STP分析

STP分析は、自社の立ち位置や差別化ポイントを以下の視点から分析するフレームワークです。

Bセグメンテーション
Tターゲティング
Pポジショニング

「市場の細分化→ターゲットの設計→自社の立ち位置の明確化」という方向性で分析を進めることで、ターゲットのニーズを明らかにしたり競合他社との差別化ポイントを見極めたりすることができます。

 

◆PEST分析

PEST分析は、以下の4つの視点からマクロ環境を分析できます。

P(Politics):政治
E(Economy):経済
S(Society):社会
T(Technology):技術

自社を取り巻く環境は常に変化します。定期的なPEST分析によって、自社はどのような状況に置かれているのかを把握しておきましょう。

 

◆3C分析

3C分析は、以下の3つの視点から自社や外部環境を分析するフレームワークです。

Customer市場(顧客)
Company自社
Competitor競合他社

マーケティングでは、市場の理解や自社の状況把握、競合他社の動向などの情報が重要になります。3C分析で細かく現状を把握することで、より効果的な戦略を立案できるでしょう。

 

◆ファイブフォース分析

ファイブフォース分析(5フォース分析)とは、自社にとって脅威(フォース)になりえる要因の関係性を紐解くためのフレームワークです。

市場内での競合他社の脅威
新規参入者の脅威
売り手(サプライヤー)の交渉力
買い手(顧客)の交渉力
代替品(異業種の他社製品)の脅威

「競合他社の脅威」を中心に、5つの項目それぞれがどのように関わり合っているのか、その関係性による脅威はどれほど自社にダメージを与えるのか、といった視点から分析します。

 

◆SWOT分析

SWOT分析は、以下の4つの視点から自社にとってポジティブな要因とネガティブな要因を明らかにします。

S(Strength):強み
W(Weakness):弱み
O(Opportunity):機会
T(Threat):脅威

自社の置かれている現状を把握するだけでなく、「自社の強みを活かす戦略なのか」「自社の弱みを解決・改善する戦略なのか」など、具体的に考えることもできます。SWOT分析は、上場を目指す際や新規事業を展開する際にもよく使われるフレームワークです。

 

◆VRIO

VRIOは、自社商品・サービスについて以下の4つの視点から分析するフレームワークです。

V(Value):社会的価値
R(Rarity):希少性
I(Inmitability):模倣困難性
O(Organization):組織

自社商品・サービスはどのような価値を提供できているか、希少性があり模倣が困難か、魅力を伝えるための組織体制が構築できているか、という内容です。それぞれの視点から分析することで、自社商品・サービスの強みや課題を洗い出すことができるでしょう。

 

次回は、「採用戦略や人材定着策の立案、実行」について解説していきます。


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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