コラム

これまでの連載で、企業価値を高める方法として、「事業の収益性の向上」「投資効率の最適化」「財務状況の見直し」「無形資産の把握と活用」「仕組み化」「経営理念、パーパス、ビジョン、ミッション等の言語化」「人員の再配置と最適化」「業務フローの構築」「業務マニュアルの整備」について解説してきました。本稿では、コスト削減について解説していきます

◆これまでの連載記事
【連載】売却できる会社に育てる方法⑬「業務マニュアルの整備」
【連載】売却できる会社に育てる方法⑫「業務フローの構築」
【連載】売却できる会社に育てる方法⑪「人員の再配置と最適化」の注意点と手順
【連載】売却できる会社に育てる方法⑩「人員の再配置と最適化」の目的とメリット
【連載】売却できる会社に育てる方法⑨経営理念、パーパス、ビジョン、ミッション等の言語化
【連載】売却できる会社に育てる方法⑧仕組み化の手順と方法
【連載】売却できる会社に育てる方法⑦仕組み化のメリット
【連載】売却できる会社に育てる方法⑥無形資産の把握と活用
【連載】売却できる会社に育てる方法⑤財務状況の見直し
【連載】売却できる会社に育てる方法④投資効率の最適化
【連載】売却できる会社に育てる方法③事業の収益性向上のためのブランディング
【連載】売却できる会社に育てる方法②事業の収益性向上のための社内連携強化
【連載】売却できる会社に育てる方法①事業の収益性向上のための施策

 


【会社経営にかかるコストの種類】

経営者の方々であれば重々把握されているかと思いますが、会社経営にかかるコストの大まかな種類は以下のとおりです。

・人件費(給与、通勤費、残業代などの各種手当、賞与、交通費、採用費など)
・オフィス費(賃料、水道光熱費、リース代、備品代)
・IT機器関連費(システム維持管理代、端末管理代)
・諸経費(事務用品などの消耗品、接待交際費、広告宣伝費など)

 

これらのコストの削減ができると、次のようなメリットを得られます。

・利益の増加
・コスト削減した分を社員に還元することによるモチベーションや満足度の向上
・コスト削減のプロセスにおける業務の効率化
・業務効率化による社員の労働生産性の向上
・新事業や開発への投資による企業価値の向上

コスト削減は、単に利益を増やすだけでなく企業価値を高める上でも重要な施策の一つです。

 


【コスト削減を実行・実現するためのステップ】

コスト削減を実行・実現するためには、以下のようなステップで進めていくと良いでしょう。

 

◆ステップ1「現状把握」

・なににどれだけの費用が掛かっているか
・コスト削減できない部分はどこか
・コスト削減してはいけない部分はどこか

などを把握しておきます。現状を正しく把握することで、コスト削減や業務の効率化が可能になります

 

◆ステップ2「削減目標の設定と削減プランの作成」

現状把握ができたら、次は削減目的の設定と削減プランの作成です。必要なコストとそうでないコストを仕分けし、どれから削減していくか優先順位を決めていきます。コスト削減に向けて取り組む順番を決めたら、具体的な行動プランに落とし込んでいきます

・以前は必要だったものの、現状では不要になっているもの
・年に数回しか利用しないもの
・代替が可能なもの
・相見積もりを取らずに発注していたもの

などは、削減できる可能性が高いでしょう。

 

◆ステップ3「削減プランの共有と実施」

削減プランを作成したら、社内に共有して実行に移していきます。コスト削減に関係する人すべてに情報(コスト削減の目的や目標)を共有しておくと、社内の反発を防げるでしょう。これまでは購入できていた備品や経費が突然使えなくなると、当然ですが社員のモチベーション低下や会社への不信感につながりかねません。社員の理解と納得は不可欠ですので、周知徹底を怠ってはいけません

 

◆ステップ4「実施した結果の分析と検証」

実施した結果、どのコストをどれくらい削減できたのかは、定量・定性的に評価・分析する必要があります。検証サイクルは1ヶ月、3ヶ月、半年後など、期間を決めて定期的に行うと良いでしょう。また、コスト削減のアイデアを社員から募集するのも、会社全体の取り組みとして良いと思います。コスト意識を社員全員に持ってもらうことも重要です

 


【コスト削減の方法】

コスト削減の方法を検討する際は、

・不要なコストはないか
・プラン等の見直しができるコストはないか
・システム導入で効率化できるコストはないか
・内製化してコスト削減できるものはないか
・外注化してコスト削減できるものはないか

といった視点で整理していきます。

 

前述のコストの種類、「人件費」「オフィス費」「IT機器関連費」「諸経費」それぞれのコスト削減方法の一例をご紹介します。

 

◇人件費のコスト削減方法例「外注化(アウトソーシング)」

社内で行っている業務を外注化(アウトソーシング、外部委託)すると、社員を雇うよりも人件費を削減できることがあります。人件費は固定費になりますが、繁閑差がある業態ではできるだけ変動費化できた方が経営上良いでしょう。また、外部委託は人件費を抑えるだけでなく、社内の人材がコア業務に集中できるというメリットもあり、業務改善にもつながります

 

◇オフィス費のコスト削減方法例「テレワーク・リモートワーク導入」

テレワーク・リモートワークを導入することで、賃料や電気代等のコスト削減が実現できます。オフィス賃料は固定費として大きな割合を占めるため、完全テレワーク・リモートワークやシェアオフィス・コワーキングスペースの利用なども検討すると良いでしょう。

また、電話代やインターネット代などの通信料は、法人向けに設定されているプランがあり、割引キャンペーンを適用できる場合があります。そうした割引を活用すれば、無理なくコスト削減できるでしょう。

他にも、照明器具をLEDに変えて電気代を削減することもできますし、「人がいないエリアのエアコンは消す」など、些細なことですが温度管理に気を遣うことでコスト削減につながることもあります。

 

◇IT機器関連費のコスト削減方法例「リース・レンタルの見直し」

コピー機などのリース・レンタル代は月額で定められており、印刷代金はカウンター料金としてカウントされた月間印刷枚数によって変動します。契約から年月が経っている場合は、稼働量も変動するため契約の見直しがオススメです。また、古いコピー機から新しいコピー機に替えるだけでも消費電力を抑えることができるでしょう。

 

◇諸経費のコスト削減方法例「広告費の見直し」

メディア掲載料や媒体への広告掲載料などは、定期的に見直すと良いでしょう。費用対効果に合っているか、常にコスト意識を持つ必要があります。「これまでずっと広告を出しているから」と、なんとなく出稿するよりも、成果の悪い広告は見直してコスト削減してください。案外社内で広告の企画・立案をした方が良い効果を生むことがあります。

 

次回は、「マーケティング戦略の立案、実行」について解説していきます。


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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