コラム

これまでの連載で、企業価値を高める方法として、「事業の収益性の向上」「投資効率の最適化」「財務状況の見直し」「無形資産の把握と活用」「仕組み化」「経営理念、パーパス、ビジョン、ミッション等の言語化」について解説してきました。本稿では前回に続き、人員の再配置と最適化について解説していきます。

◆これまでの連載記事
【連載】売却できる会社に育てる方法⑩「人員の再配置と最適化」の目的とメリット
【連載】売却できる会社に育てる方法⑨経営理念、パーパス、ビジョン、ミッション等の言語化
【連載】売却できる会社に育てる方法⑧仕組み化の手順と方法
【連載】売却できる会社に育てる方法⑦仕組み化のメリット
【連載】売却できる会社に育てる方法⑥無形資産の把握と活用
【連載】売却できる会社に育てる方法⑤財務状況の見直し
【連載】売却できる会社に育てる方法④投資効率の最適化
【連載】売却できる会社に育てる方法③事業の収益性向上のためのブランディング
【連載】売却できる会社に育てる方法②事業の収益性向上のための社内連携強化
【連載】売却できる会社に育てる方法①事業の収益性向上のための施策

 


【適切に人員配置するための注意点】

人員配置を進めていくためには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。

重要なのは、現状把握です。まずは現状を把握するために情報の収集と整理を行います。以下のような情報があると、人員配置を検討しやすくなるでしょう。

・スキル情報:社員がどんなスキルやノウハウを持っているかをまとめたもの(資格の取得履歴、研修の受講履歴など)
・キャリア情報:職務経歴書などのキャリアをまとめたもの(採用時の面接情報、異動・昇降格の履歴など)
・キャリアプラン情報:今後どのようなポジションに就き、成長していきたいかをまとめたもの(評価面談・人事面談の履歴など)

 

人員配置の最適化のためには、これらの情報をあらかじめ整理しておく必要があります。人事評価面談の中で業績の他にスキルの把握をし、マネージャー・上司と今後のキャリアプランの希望について話す機会も設ければ、情報収集がしやすくなるでしょう

 

「業務に関する不満や不安はないか」

「現在の人事評価基準に不満はないか」

「現在の業務以外で、関心のある仕事や職種はあるか」

 

などの本音を、人事評価面談でぜひ聞き出してみてください。

 

人員配置を進めていくためにもう一つ注意したいのが、人員配置の効果を確認することです。人員配置は年度替わり等で検討することが多いと思いますが、人員配置を実行する前と後で、どのような変化があったかを確認してみましょう

・社員の満足度は変化したか
・ミス、トラブルの発生率を含め、業務効率に変化はあったか
・部署内の人間関係やチームワークに変化はあったか
・業務量と人員数のバランスは適切か

 

変化の度合いを測るためにも、定性(言葉)だけでなく定量(数字)でも変化の記録を残すようにしてください。人員配置がうまくいったのかそうでなかったのかを判断できることが重要です。

 


【人員配置を最適化させる手順』

では、人員配置を最適化させるには、どのような手順で進めるのが良いのでしょうか。

まずは、現在の人員配置の確認から行ってください。各部署・各部門や各営業所にどのようなポジションの社員が何人在籍しているのかを確認します。人員の過不足についても、マネージャーなどの担当者に確認しておきましょう。

現在の人員配置の確認ができたら、次は前述の「スキル情報」「キャリア情報」「キャリアプラン情報」を確認し、参考にしながら人員配置を検討します。その際、重要になってくるのが「空きが出たから補充する」という視点ではなく、適材適所の視点で検討することです

社内の全部署・部門を一覧で表にし、ポジションを空欄にしておきます。あらかじめポジションにマッチしそうな候補者リストを作成しておいて、経営陣や人事部、マネージャーなどの担当者と、どの社員をどのポジションにするかを議論しましょう。その際には人事評価や今後のキャリアの希望などのデータも参考にし、特に昇格させる場合は周囲の納得感を得られるかも議論しておく必要があります。

人員配置は、一度実行すれば終わりというものではありません異動後のポジションでパフォーマンスが向上しているかなどをモニタリングし、半期ごとなど定期的に見直しを行ってください。部署変更や異動、昇進・昇格の他に、新規採用や雇用形態の変更など、人員配置の最適化にはたくさんの打ち手があります。人の心理や将来の希望は常に変化しますから、人員配置に完成形はないのですが、その分やりがいのある領域でもあります。

 

次回は、「業務フローの構築」について解説していきます。


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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