コラム
- M&A全般M&A前(プレM&A)M&A後(PMI)
M&Aにおける課題とは
事業承継問題の解決や出口戦略として、中小企業オーナーにとっても身近な選択肢となってきたM&Aですが、M&Aにおける課題にはどのようなことがあるのでしょうか。本稿では、中小企業庁が発表する「中小企業白書」(*1)を参考に、M&Aの課題について解説します。
【M&Aにおける3つの実行段階】
出典:M&A実施に当たっての課題|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_6_3_2.html)
中小企業の『M&A実施に当たっての課題』によると、M&Aの実行段階は「マッチング時」「交渉時」「統合時」の3つに分けることができます。
◆マッチング時
仲介者・アドバイザーの選定から仲介・アドバイザー契約の締結、事業評価、相手先企業の選定(マッチング)までの段階のこと。
◆交渉時
交渉から基本合意書の締結、デューデリジェンス、最終契約の締結、クロージングまでの段階のこと。
◆統合時
M&A実施後の統合業務(PMI)のことです。PMIはアフターM&Aとも呼ばれますので、本稿ではアフターM&Aの課題と表記します。
【M&Aマッチング時の課題】
出典:M&A実施に当たっての課題|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_6_3_2.html)
M&Aのマッチング時の課題として、
- 判断材料としての情報が不足していた
- 効果がよく分からなかった
- 仲介等の手数料が高かった
- 自社の社内から反対があった
- 相談相手がいなかった
などが挙げられています。
中小企業庁が、「今後M&Aが推進されていくためには第三者を介した円滑なマッチングが重要といえよう」と述べている点にも注目しておきたいところです。M&Aには、第三者の視点や支援が欠かせません。
【M&A交渉時の課題】
出典:M&A実施に当たっての課題|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_6_3_2.html)
M&Aの交渉時の課題については、
- 買収金額の折り合い
- 企業文化 組織風土の違い
- 相手先の従業員の処遇 流出回避
- 簿外債務等のリスクの存在
- 相手先の経営層の処遇
- 買収時期の調整
- 買収方法の調整
が挙げられています。
買収金額の折り合いは言わずもがなですが、文化・風土の違いのように言語化、数値化しにくい課題があることにも注意が必要です。また、処遇面の調整や買収時期、買収方法の調整のように、M&Aには幅広く、かつ繊細な調整作業が伴います。この点からも、第三者の存在が欠かせないのです。
【アフターM&A(統合過程、PMI)の課題】
出典:M&A実施に当たっての課題|中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_6_3_2.html)
アフターM&A(統合過程、PMI)における課題については、
- 企業文化 組織風土の融合
- 相手先の従業員のモチベーション向上
- 人事・賃金制度やITシステムの統合
- 経営ビジョンの共有
- 相手先の事業収益の改善
- 自社と相手先との業務分担の見直し
- 事業戦略の統合
が挙げられています。
アフターM&A(PMI)の重要性については、これまでのコラムでもお伝えしていますが、M&A実行後も経営は続きます。そのため、アフターM&Aこそがもっとも重要であり、買い手(譲受)企業はM&A後を想定して案件を進める必要があるでしょう。
M&Aを自社だけ、もしくは中小企業オーナー個人で進めようとすると、交渉時にトラブルになることや、統合時にトラブルになることがあります。適正な仲介・アドバイザーを見つけ、調整役になってもらうのが賢明です。
(*1)参照:2018年版 中小企業白書(中小企業庁 平成30年4月)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_6_3_2.html
【これまでのコラムにおける参考記事】
PMIは人事も重要!アフターM&Aで求められる人事系エグゼクティブ人材
アフターM&Aと採用戦略で人が辞めない経営を
【前編】M&Aは譲受後が重要!アフターM&Aを成功させるためのPMIとは
【後編】M&Aは譲受後が重要!アフターM&Aを成功させるためのPMIとは
中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。