コラム
- M&A全般経営者の悩み
M&A「仲介」と「FA」に相談するそれぞれのメリット
前回の【M&A「仲介」と「FA」の違い】では、M&A仲介会社とFAそれぞれの役割等について解説しました。本稿では、M&A仲介会社やFAに相談する、それぞれのメリットについてお伝えします。
【M&A仲介会社に相談するメリット】
M&A仲介会社に相談するメリットは、主に下記の3つです。
◆M&A仲介会社に相談するメリット①「マッチングのための幅広いネットワークを持っている」
M&A仲介会社は、買い手（譲受）企業と売り手（譲渡）企業の情報やネットワークを数多く持っています。そのため、自社の株式譲渡や事業譲渡を検討したとき、条件に合う買い手（譲受）候補を紹介してくれ、相手が見つけやすいメリットがあります。
より良いマッチングを行うためには、どうしても数の原理を働かせる必要がありますから、幅広いネットワークを持っているに越したことはありません。
特に、M&Aの成功は譲渡金額だけで決まるものではありません。双方の会社にとってシナジーが見込めるかどうか、社員や取引先にとって信頼できる相手であるかどうか、などのポイントもM&Aの成功を左右する要素です。買い手（譲受）企業と売り手（譲渡）企業の希望や経営課題などを深くヒアリングできているかどうかも、極めて重要になります。
◆M&A仲介会社に相談するメリット②「相談からM&Aの成立まで、一貫してアドバイスをもらえる」
M&Aの成立には、財務、税務、法務、労務、人事、事業、技術面などの複雑で多岐にわたる知識と経験が必要です。こうした知識や経験が豊富なM&A仲介会社を活用することで、安心してM&Aを進めることができるでしょう。
まだ「会社をだれかに譲ろう」と決断する前段階の相談から、匿名打診、トップ会談、デューデリジェンス、交渉、アフターM&A（PMI）など、一貫して専門的なアドバイスをもらえることも、M&A仲介会社に相談する大きなメリットです。
◆M&A仲介会社に相談するメリット③「M&Aが成約する確率が高まる」
M&A仲介会社の大きな役割は、利害の対立する交渉を買い手（譲受）企業と売り手（譲渡）企業の間に入り、双方とコミュニケーションを取りながら行うことです。M&A仲介会社が入ることで情報の整理が早くなり、成約までの期間の短縮や、結果的に成約する確率も高まる可能性があります。
もしも、買い手（譲受）企業と売り手（譲渡）企業の経営者同士が旧知の仲であったとしても、金銭が絡むことで交渉が決裂してしまい、友人関係も途絶えてしまうことがあります。愛情を持って、自分の時間とお金、労力をかけて育ててきた会社なのですから、値下げのための荒探しのようなことをされたら、だれでも気分を害するものです。
M&Aにおける交渉は、買い手（譲受）企業と売り手（譲渡）企業の双方のどちらかが一方の利益を強く主張すれば、交渉が決裂してしまいます。それぞれの利益のバランスを考え、友好的なM&Aを成立させるためにも、仲介会社に相談するのが一般的です。
【FAに相談するメリット】
では、M&A仲介会社ではなく、FAに相談するメリットにはどんなことがあるのでしょうか。
「仲介会社は、自社の利益を最大限にしてくれない」
「FAの方が依頼主のために尽くしてくれる」
という意見もあります。しかし、「顧客の利益」の定義は必ずしも金額の大小とは限りません。いくら高く売れても（あるいは、安く買えても）、それだけがM&Aの成功とは言えないからです。譲渡後（譲受後）の会社の発展や成長まで考慮する必要があります。
場合によっては、譲渡金額面で譲歩することで、その他の条件面でそれ以上のメリットを得られる可能性もあります。自社にとっての利益とはなにか、改めて検討する必要があります。そのような調整も、M&A仲介会社やFAの役割です。
また、仲介会社であってもFAであっても、「M&Aを成立・成功させたい」という目的はどちらも同じです。買い手（譲受）企業と売り手（譲渡）企業、双方の利益の落としどころを見つけなければ、M&Aは成立しません。
M&A仲介会社とFAのどちらに相談すべきかは、利益の最大化という観点だけではなく、「M&Aの目的は何で、どうすればそれを達成できるのか」について、総合的・多角的に判断すると良いでしょう。人間同士ですから、どうしても相性というものもあります。本音を話せる相手が、M&Aの相談相手には一番です。
中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
