コラム

M&Aという出口戦略を検討すると、その相談相手としてM&A仲介会社やFAと出会うことになります。M&A「仲介」と「FA」には、どのような違いがあり、それぞれの役割はどのようなものなのでしょうか。本稿では、M&A仲介とFAの役割の違いについて解説します。

 


【M&A仲介とは】

M&Aを効率的に進めるためには、仲介会社などに間に入ってもらうことが一般的になっています。中には仲介会社ではなく、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)に助言を依頼することもあります。M&A仲介会社もFAも、M&Aを成功させるための存在ではあるのですが、それぞれに違いがあります。

M&A仲介は、M&Aアドバイザーが売り手(譲渡)企業と買い手(譲受)企業の間に立って、中立的な立場でM&Aの成立をサポートするのが役割です。

M&A仲介会社に依頼すると、同一のM&Aアドバイザーが売り手(譲渡)企業と買い手(譲受)企業の間に立ち、交渉の仲介を行うことになります。中立的な立場ですから、売り手(譲渡)企業と買い手(譲受)企業どちらか一方の利益の最大化を目指すのではなく、客観的・中立的な立場で交渉を行うのがM&A仲介の特徴です。

 


【FAとは】

FAは、M&Aにおける助言業務を行う人のことです。「買い手FA」「売り手FA」などと呼ばれます。FAの場合、売り手(譲渡)企業と買い手(譲受)企業がそれぞれ別のFAをつけて交渉を進めていくところに特徴があります

M&A仲介と違う点は、FAは依頼主である売り手(譲渡)企業、または買い手(譲受)企業のどちらか一方につくため、依頼主の利益を最大化するように行動するところです。メリットがある一方で、同時に対立が明確になり、お互いの利益を主張し合うことで、交渉がまとまりにくくなるというデメリットもあります。

FAに依頼した際によくあるトラブルは、FAが依頼主の期待に応えようとして交渉相手に過度な要求を行なうことで交渉自体が決裂してしまうケースや、M&A成立後の会社間関係や人間関係に火種を残してしまうケースです。

 


【M&A仲介とFA、それぞれの役割】

M&A仲介の主な役割は、以下の3つです。

◆M&Aのマッチングと円滑なコミュニケーション

売り手(譲渡)企業と買い手(譲受)企業、それぞれにとって良い相手先を探すことはとても時間がかかりますし、とても難しいことです。M&A仲介会社は、そのネットワークやプラットフォームなどを活用することで、なるべく短期間で相手先を探してくれます。

仲介会社は、売り手(譲渡)企業と買い手(譲受)企業、それぞれの思いや戦略を汲み取って、中立的な立場で落としどころを探っていきます。M&A成約後のスムーズな引き継ぎや運営を見据えて、アフターM&Aまで配慮・サポートしてくれる仲介会社が理想的でしょう。

◆スケジュールの管理

すでにM&Aの経験が豊富であれば、自社でもスケジュール管理できるかもしれませんが、特に売り手(譲渡)企業にとってはM&Aの経験がないことがほとんどです。M&A仲介会社に代わりにスケジュール管理をしてもらうことになります

◆過不足のない取り決め

M&Aの交渉では、広範囲にわたる事項の取り決めが必要です。譲渡金額や社員の処遇、取引先との関係、引き継ぎ方法など多くのことを決めなければいけません。会社法や各種税法など多くの法律が関係してきますから、契約後の保全を考えて契約書や覚書を作成する必要もあります。経験豊富な仲介会社が間に入ることで、それぞれの取り決めの意味やリスクを把握して定めていくことができます

 

一方、FAの主な役割は、以下の2つです。

◇依頼主へのアドバイスや戦略づくり

FAの主な役割は、M&Aを成立させるためのアドバイスや戦略づくりです。会計士や弁護士などの専門家がFAとして同様の依頼を受けることもあります。企業分析や財務分析、財務、法務、事業、技術などの各種デューデリジェンス(DD)、専門知識を活かした助言や戦略立案、交渉への参加などもFAの役割です

◇依頼主の利益を最大化するための交渉とリスク回避

FAの活用は、上場企業同士のM&Aや、国を越えたクロスボーダーM&Aなど、大型の取引において一般的とされています。経営陣が不特定多数の株主に訴えられないように、M&Aの手続きが適正であるか、譲渡の条件が妥当であるかなどを厳密に求めるため、自社の利益の最大化と法的リスクの回避をFAに委託するということが主な理由として挙げられます

 

M&A仲介会社もFAも、M&Aの成立を目指す点は同じですが、立場と役割に違いがあります。仲介会社とFAそれぞれの話を聞いてみて、信頼できる相手に依頼するのが良いでしょう

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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