コラム

M&A案件に関わっていると、売り手(譲渡)企業のオーナー経営者の方からよくいただく質問がいくつかあります。会社や事業の売却・譲渡は、頻繁に行なうことではないので疑問がわくのも当然です。本稿では、オーナー経営者の方からいただく質問の中から5つを選んで回答します

 


Q. 会社は売れるのか?

 

A.結婚と同様、相手がいることなので話を進めてみないとわかりません

売り手(譲渡)企業のオーナー経営者にとって満足できる条件で会社や事業を売却・譲渡できるかどうかは、「話を進めてみないとわからない」が正直な回答です。利益が出ていて、今後の伸びしろも期待できる会社や事業であっても、M&Aが成立しないことはあります。また逆に、赤字・債務超過の会社であっても売れることがあります

「こういう会社や条件であれば、買い手(譲受)企業が見つかりやすい」という傾向はありますが、売り手(譲渡)企業のオーナー経営者が満足のいく条件を引き出せるかどうかは、なかなか予測できないものです。

とは言え、好条件を引き出す方法はありますので、信頼できるM&AアドバイザーやM&A仲介会社に相談してみると良いでしょう

 

Q. M&Aが成立する確率はどれくらい?

 

A.統計データがあるわけではありませんが、肌感覚では1~2割ほどです。

成立しないM&A案件は公表されませんし、成立したとしてもすべてが公表されるわけではないので集計できませんが、体感としては「売却・譲渡を決断してから成立まで進む確率」は、1~2割です。これを低いと感じるかどうかは人それぞれですが、M&Aを会社同士の結婚と捉えれば決して低い数字ではないと思います。

M&Aがなかなか成立しない理由には実にさまざまなものがありますが、

  • 赤字や債務超過で、買い手が付きにくいM&A案件も多い
  • 売り手(譲渡)企業オーナーの理想が高く、条件が折り合わない
  • 買い手(譲受)企業側が決断を引き延ばす

などの理由もあります。最終的には双方が納得しないとM&Aは成立しませんから、成約率が1~2割なのも当然なのです。

 

Q. 家族に会社の売却について話すタイミングは?

 

A.よほどの事情がない限り、真っ先に相談すべき相手は家族です。

会社の売却は、経営者人生において重大な決断であることがほとんどです。事前の相談もなく話を進めていたと後から知ったら、ご家族も良い気持ちはしないでしょう。

しかし、あまりにも感情的に反対されることが予め予測できる場合は、あえて伝えずにおくという選択肢もあり得ます。ただ、その方が自社株を保有している場合は、トラブルに発展することがありますので、早めにお伝えしておいた方が良いです

 

Q. 社員にはどんな影響があるのか?

 

A.心理的な負担は生じますが、雇用条件を維持させることはできます。

「M&A成約後にリストラや賃下げがある」ことも完全には否定できませんが、中小企業のM&Aの場合は、そんなことをしたら貴重な人材が失われ、会社が機能しなくなります。そのため、社員の待遇については事前に取り決める場合はほとんどです。

心理的な負担は避けられませんが、M&A直前やM&A後の社員の方との関わり方次第でそれも軽減することはできるでしょう。

 

Q. どんな会社が買うのか?

 

A.中小企業のM&Aの場合、同業他社や隣接業界が多いです。

譲渡金額が10億円を超えるM&A案件であれば、ファンドや大手企業が買い手(譲受)企業候補として挙がることもありますが、比較的サイズの小さいM&A案件の場合は中小企業同士や中堅企業への売却・譲渡が一般的です。

些細なことでも、疑問がわいたら信頼できるM&AアドバイザーやM&A仲介会社に一度相談してみると不安が解消されるかもしれません

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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