コラム

事業承継は、だれに継ぐかによって3つの選択肢に分類できます。「親族内承継(子や配偶者、娘婿など)」「親族外承継(社員へのMBOなど)」「第三者への承継(M&A)」の3つです。M&Aという選択肢を取るケースが年々増加していますが、年末年始やお盆など、親族で集まる機会の多い時期には、改めて親族内承継についても再考していただければと思います。

 


【M&Aを検討する前に確認しておきたい「親族内承継」】

親族内承継とは、息子や娘、配偶者、娘婿、姪、甥などの血縁・親族関係のある人が後継者となる場合の承継のことです。「跡取り」と聞くとイメージしやすいでしょう。

同族経営が多くを占めてきた日本の中小企業では、親族内承継が主な事業承継パターンでしたが、

「子が家業を継ぎたがらない」
「先行きが見えない時代に、子に継がせるのが本当に良いのか」

という割合が高まり、親族外承継や第三者への承継を検討するケースが増加しています。職業選択の自由化や、少子高齢化などが影響しているでしょう。経営者の中には、「子には自由に生きてほしい」という思いと、「会社を存続させたい」という思いに揺れる人も少なくありません。

 


【親族内承継のメリットとは】

M&Aを検討する前に、私は売り手企業(譲渡企業)のオーナーに対して必ず「親族内承継という選択肢はないのか」を確認するようにしています。後継者が子どもであれば、幼い頃から後継者になるための心構えや企業理念、経営者として必要な知識、スキル等を装着させやすいからです。また、親族が後継者であれば、社員や取引先も比較的受け入れやすい傾向にあります

親族内承継は、「贈与」「譲渡」「相続」の3つの方法で事業承継され、承継の方法によって、手続きや課される税金の種類などが異なります。親族内承継では、さまざまな手法を検討できるので、その会社や後継者の状況に合わせて最適な方法を選択できることも、親族内承継のメリットです。

 


【親族内承継のデメリットとは】

では、親族内承継のデメリットにはどんなことがあるのでしょうか。

「親族に必ずしも経営者の資質・適性があるとは限らない」「本人に会社を経営する意思があるとは限らない」という点や、「事業承継をきっかけに親族間のトラブルに発展してしまう可能性があること」「個人保証の引継ぎ問題」などがデメリットとして考えられます

相続が争族に発展しないよう、相続人全員が納得した上で事業承継を行えるように、入念な話し合いを行うことが大切です。年末年始のように、比較的時間に余裕があるときに話し合っておくのも良いでしょう。

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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