コラム

会社や事業の売却を考えたとき、M&Aの完了までの期間はどのくらいを想定すれば良いのでしょうか。本稿では、M&Aのプロセスやかかる期間、引継ぎ期間、期間が短くなる理由と長くなる理由について解説します。

 


【会社や事業の売却のプロセスと完了までにかかる期間】

M&Aの事前検討・事前準備から最終契約(譲渡実行)までにかかる期間は、中小企業間のM&Aでは6ヶ月~1年が多くなっています。以下に、M&Aのプロセスと必要期間についてまとめます。

 

◆M&Aの事前検討・事前準備(1ヶ月~3ヶ月)

・親族内承継、社内承継を含めた事業承継の選択肢の検討
・M&A仲介会社、M&Aアドバイザーとの面談、選定
・企業価値の試算 など

 

◆M&Aの正式プロセス(5ヶ月~9ヶ月)

・M&A仲介会社、M&Aアドバイザーとの契約
・M&A戦略の検討
・詳細資料の準備
・買い手企業(譲受企業)候補の選定、匿名打診
・秘密保持契約書の締結
・企業概要書の提示、顔合わせ会談
・意向表明書の提出
・基本条件の交渉、基本合意書の締結
・デューデリジェンス
・最終条件交渉、最終契約書の締結
・資金調達準備、関係者への説明
・決済と譲渡実行

 


【忘れてはいけないM&A後の「引継ぎ期間」】

譲渡実行の後には、PMI(統合作業)という重要なプロセスもあります。PMIは買い手企業(譲受企業)が行いますが、売り手企業(譲渡企業)の経営者が関わることもあります。M&A後の引継ぎ期間は、ケースバイケースですが6ヶ月~2年ほどを想定しておくと良いでしょう。ノウハウや技術、人的ネットワークの引継ぎを行いながら会社経営に協力していきます。

もちろん、中には譲渡実行後すぐに退任することもあります。また、「経営者ではなくなるが、事業責任者として残ってほしい」というケースもあり、買い手企業(譲受企業)と売り手企業(譲渡企業)の意向に応じてさまざまです。

なるべく早く引退したいというケースは、ご自身の体調不良や配偶者、家族の介護、育児などが売却理由になっている場合に多い傾向があります。また、対象事業への情熱が薄れていること(飽きた)が売却理由になっている場合も、早期引退を希望することがあります。

時間をかけて引継ぎたいというケースは、営業を経営者一人が担っていて、属人的な業務になっている場合に多い傾向があります。取引先との人間関係が重要な業務であれば、人間関係の引継ぎにはどうしても時間がかかります。また、会社や事業を売却したことで「経営者」という重責から解放され、むしろ仕事に意欲的になり事業責任者として会社に残ることもあります。

 


【会社や事業の売却までの期間が「短くなる理由」と「長くなる理由」】

では、M&A完了までの期間が「短くなる理由」と「長くなる理由」には、どのようなことがあるのでしょうか。

まず期間が短くなる理由は、例えば以下のとおりです。

  • 同業同士のM&Aや、すでに取引関係がある場合
  • 買い手企業(譲受企業)がM&A対象企業(事業)の事業内容をすでに知っている場合
  • 買い手企業(譲受企業)と売り手企業(譲渡企業)のニーズが一致している場合
  • 買い手企業(譲受企業)の取得ニーズが高く意欲的な場合
  • 買い手企業(譲受企業)がM&A経験豊富な場合

 

次に期間が長くなる理由には、以下のようなことがあります。

  • 売り手企業(譲渡企業)の事業規模が大きい場合
  • 株主や取引先、仕入先など、売り手企業(譲渡企業)のステークホルダーの了解取付けに時間がかかる場合
  • 取締役会の決議など、買い手企業(譲受企業)のステークホルダーの了解、意思決定に時間がかかる場合
  • 組織再編行為を伴うスキームで、会社法上必要な手続きに時間がかかる場合
  • 事業譲渡スキームで、許認可の新規取得や契約の名義変更が必要な場合

 

サイトM&Aや事業譲渡の場合、1ヶ月以内というスピーディーなM&Aも可能ですが、会社や事業の売却は時間を要しますので、事前準備・事前検討をしっかり行うことをオススメします

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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