コラム

M&Aで会社を売却すれば、それで一旦経営者人生は終わります。しかし、売却から程なくして次の事業を始める人も多くいます。いわゆる「連続起業家」です。連続起業家に向いている人はどんな人なのでしょうか

 


【連続起業家とは】

ゼロイチで起業して、あるいは既存事業を成長させてM&Aで売却し、その資金を元手にまた新しい事業を開拓する人を「連続起業家」や「シリアルアントレプレナー」と呼びます

連続起業家には、いわゆるプロ経営者とは違い、常に新たなビジネスモデルを創造・構築する「創業者」というニュアンスが含まれています。そのため、「イノベーター」に近い概念で用いられることもあるでしょう。「プロ起業家」と言い換えることもできるかもしれません。社会にインパクトのある新規事業を立ち上げ、成長させる連続起業家は、その国の経済力を高める大きなカギともいえます。

かつて、起業家にとっての「成功」とは、IPO(上場)することが象徴のひとつでした。しかし、上場するとさまざまなルールのなかで経営する必要があり、なかには窮屈さを感じてしまう人もいます。また、上場を目指したとしても、実際にできるのはごく一部です。そのため近年では、出口戦略としてM&Aを選択し、さらに連続起業するという価値観が浸透しつつあります

その背景には、アメリカの大手企業がM&Aを投資戦略として採用する事例が増えていることがあるのかもしれません。例えば、メタ社(旧フェイスブック社)はインスタグラムやワッツアップを買収して成長しています。これと似たことが日本でも起きており、ベンチャー・スタートアップ企業のM&Aを積極的に検討する日本の大手企業も増えてきています。買い手(譲受)企業が増えれば、それだけ連続起業家という道を選べる可能性も高まるということです。

 


【連続起業家に向いている人】

では、連続起業家に向いているのはどんな人なのでしょうか。

 

◆ビジネスホリック

連続起業家の人には、そもそもビジネス好き・ビジネス中毒(ビジネスホリック)な人が多いでしょう。「好きこそものの上手なれ」という言葉があるように、好きでなければ連続して起業するという労力のかかることをわざわざしません。「仕事が趣味」というのはネガティブな言葉として使われることもありますが、「仕事と趣味と生活が等式」という状態は、精神衛生的にも良いのです。

 

◆既存のアイデアの活用や組み合わせが得意

連続起業家というと、「アイデアマン(ウーマン)」を連想するかもしれませんが、必ずしもそうではありません。すでにあるアイデアを活用したり、複数の既存のアイデアを組み合わせたりして価値を生み出すことが得意な人は、連続起業家に向いているでしょう

 

◆人を巻き込むのが得意

事業は自分一人だけでできるものではありません。どんなに良いアイデアがあっても、それを事業化し、軌道に乗せるには協力者が不可欠です。連続起業家は人を巻き込むことが得意で、一緒に事業をしてくれる仲間を集めていける人です

 

◆人間好き

連続起業家に向いているのは、業界や国を越え、常にさまざまな人々とコミュニケーションを取り、協力してビジネスに打ち込める人です。そのため、連続起業家には人間好きが多い傾向にあります。より良い社会、より便利な世界、より豊かな生活を実現したいという気持ちが強く、その気持ちが新たなビジネスを生み出す原動力になっているようです

 

◆ビジネス妄想力を持つ

既存のアイデアやちょっとした思いつきをビジネス妄想力で膨らませ、思いもよらないような新しいビジネスを創造するのが連続起業家の特徴のひとつです。また、ビジネスアイデアだけではなく、失敗する可能性についても妄想力を巡らすことができれば、連続起業家として成功しやすいのかもしれません。

 

◆満足を知らない

お金や名声を得ただけで満足してしまっては、連続起業家とはいえないでしょう。安定して利益を生み出せるビジネスを構築できたとしても、その場に安住することなく、果敢に挑戦し続けるのが連続起業家の特徴です

 

◆退屈が苦痛

一度会社を売却し、リタイア生活を経験したことのある連続起業家もいます。しかし、早々にリタイア生活をリタイアして起業家に舞い戻る人も多くいます。好奇心旺盛で、退屈が苦痛なのです。

 

◆飽きっぽい

「満足を知らない」を異訳すれば、「飽きっぽい」ということにもなります。ある程度の成果が出たら飽きてしまう人は、連続起業家に向いているかもしれません。現状に固執せず、次の夢中になれるなにかに進みます。

 

◆失敗から学ぶ

連続起業家は次々と新しいことを始めるので、周囲からは「多動で欲深い」と思われているかもしれません。しかし、本人からすれば「成功と失敗」「トライ&エラー」をひたすらくり返しているだけです。そして失敗したからといって、そこで終わりではありません。失敗から学び、次に活かしてさらに高く飛躍します

 

◆決して諦めない

失敗してすぐに諦めてしまっては、連続して起業することは難しいでしょう。夢中になって失敗の原因を突き止め、成功へとつなげていくのが連続起業家です。過去ばかり振り返るのはよくありませんが、反省は必要です。経験値を積むと、人は「諦める」というある種の賢い選択をしてしまいがちですが、連続起業家は諦めることを知りません

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

コラム一覧へ戻る