コラム

事業投資、あるいは実業投資とは、事業への投資によって利益を得ることです。新規事業への投資や既存事業への投資だけでなく、M&Aも投資手段のひとつです。本稿では、事業投資の目的や手段について解説します。

 


【事業投資とは】

事業投資は、事業への投資によって利益をあげることです。事業投資に関して明確な定義はまだないため、何かしらの事業に投資して利益を得ていればすべて事業投資とカテゴライズされるでしょう。新規事業への投資や人的投資、企業買収、企業への出資、事業譲受などが事業投資の手段です

「実業投資」は、まだあまり使われていない言葉ですが、事業よりも一層実態性の高い実業への投資と本稿では定義しています。実業は事業よりも狭義であり、具体的には生産業や流通業、販売業などの事業を指します。

実業の対義語として使われるのが「虚業」です。虚業とは、社会に何の利益ももたらさない事業のことですが、比較的新しい商品やサービスは、社会に浸透する前は虚業と捉えられてしまいがちです。例えば、「ITバブル」と言われたかつて六本木ヒルズなどに拠点を置いたIT企業もその例でしょう。

ITバブルの頃のIT企業が虚業と言っても、その事業の存在によって何らかの利便性が向上したり、経済が活性化したりしていれば、社会の利益に貢献していますので虚業とは言えません。日々開発・改善をしているIT企業のことを、「虚業である」と批判する人はもういないでしょう。

 


【事業投資・実業投資の目的】

事業投資・実業投資の目的は、

  • キャピタルゲインを得ること
  • インカムゲインを得ること
  • 既存事業とのシナジー効果を得ること

の主に3つです。

 

キャピタルゲインは、投資した金額よりも高い譲渡額で売却することで得られる売却益のこと。キャピタルゲインを目的とする事業投資の代表例が、株式投資です。

一般的に株式投資は金融商品ですが、例えば、ある会社の株式をすべて取得し、事業を成長させることで会社の価値を上げ、売却時に利益を得る場合は事業投資に該当します。

インカムゲインは、資産保有中にその資産から得られる利益のこと。インカムゲインを目的とする事業投資の代表例が、株式や債券の配当、不動産の家賃などです。

キャピタルゲインとインカムゲインの他に、既存事業があればシナジー効果も投資の目的と言えるでしょう。既存事業から得ている利益以上に新規事業とのシナジー効果を発揮させることで、それぞれを足し合わせる以上の利益を得られる可能性があります。

 


【M&Aも事業投資・実業投資の手段のひとつ】

事業投資・実業投資としてまず思い浮かぶのは、新規事業の立ち上げです。新規事業を立ち上げるメリットは、良い意味で期待を裏切り、これまでにはない爆発力が生まれる可能性があることです。一方でデメリットは、いわゆるゼロイチで立ち上げるため、売上や利益などの成果が出るまで時間がかかること、また想定以上に経営資源が必要となる恐れがあることです。新規事業が軌道に乗るという保証は当然ありません。

既存事業への投資も、事業投資・実業投資のひとつです。既存事業にさらなる投資を行うことで、規模の拡大を図ります。既存事業へ投資するメリットは、これまでの事業の延長線上であるため、ノウハウを保有しており、投資リターンが見込みやすいことです。一方でデメリットは、既存事業であるため、計画を超えるようなリターンは得にくいことでしょう。新規事業への投資は掛け算的ですが、既存事業への投資は足し算的です。

M&Aによって、他企業・他事業を買収することも事業投資・実業投資の選択肢のひとつです。自社の既存事業と同じ事業をM&Aする場合もあれば、自社とは異なる事業をM&Aする場合もあります。

自社と同じ事業の会社や事業を譲受した場合は、自社の既存事業との効率的な経営が可能になるメリットがあります。それぞれの生産体制や販路、ノウハウなどを活用することで、規模の拡大を目指せるというわけです。

自社と異なる事業の会社や事業を譲受した場合は、すでに軌道に乗っていればすぐに投資リターンを得ることができるメリットがあります。また、既存事業とのシナジー効果が見込める可能性もあります。

「M&Aで時間を買う」とよくいいますが、新規事業が軌道に乗るまでの時間やコスト、苦労はときに想像を超えます。M&Aによってすでに軌道に乗っている会社や事業を譲受し、スピーディに展開することは、極めて有効な選択肢となるでしょう。

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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