コラム

M&Aで会社を売却した後のセカンドキャリアについて、考えたことはあるでしょうか? 売却後に虚無感にさいなまれ、せっかく得た譲渡益を散財してしまう方や、世捨て人のようになって現役時代の生き生きとした表情を失ってしまう方もいます。一方で、売却後に複数の会社で社外取締役・顧問を務める方もいます。M&A後のセカンドキャリアに、社外取締役業・顧問業は最適なのかもしれません

 


【社外取締役とは】

「取締役」は、会社の経営陣として、会社の経営方針を決める意思決定や業務執行、経営の監督を行う役割を担います。この役割を、社外から招くのが「社外取締役」です。

取締役は、管掌部門を持つことがほとんどです。例えば、営業・マーケティング、商品・サービス開発、人事労務、財務、経理などです。あるいは、事業部門を管掌する場合もあります。

一方の社外取締役は、管掌部門を持つことはなく、経営状況のチェック・監督の機能を期待されます。他の取締役とのしがらみや利害関係がなく、客観的に会社の状況に意見することができる立場だからです。

そんな社外取締役のなかでも、経営者を含む利害関係者から完全に独立して、一般株主と利益相反が生じる恐れのない社外取締役は、「独立社外取締役」と呼ばれています。独立社外取締役は、会社との間に利害関係を持たずに企業価値向上のために経営の監督を行う役割を担います。

社内の取締役よりも客観的な視点で経営をみることができるのが、社外取締役の特徴でしょう。コーポレート・ガバナンスの観点からも、社外取締役は必要とされているポジションです。業績の向上はもちろん重要ですが、会社が法令を遵守し、不正行為や暴走をしないよう監視することも重要なのです。また、社外取締役という肩書きに限らず、「顧問」として経営や専門領域に関するアドバイスをすることもあります

 


【社外取締役・顧問の役割】

会社の経営方針は、取締役会で決定されます。上場企業であれば、取締役会は3ヶ月に一度以上設置されています。社外取締役も、この取締役会に出席します。最近は、リモートでの出席も増えているでしょう。

取締役会のほかに、株主総会や経営状況の報告会議などにも必要に応じて参加します。社外取締役や顧問は、外部からの客観的な視点で経営方針を判断し、会社(社長)に対して、意見やアドバイスをするのが主な役割です

どんな会社も、ときには迷うことがありますし、間違えることもあります。そんなときに、会社とは利害関係のない社外取締役が、客観的に感じることを意見し、会社が間違った方向に舵を切らないように軌道修正していくことが重要です。

上場企業は、社外取締役を最低2名置くことが義務付けられていますが、最近はベンチャー・スタートアップ企業でも、起業して間もないうちから社外取締役を置くことがあります

社外取締役は、主に上場企業を中心に導入されているのですが、エクイティで資金調達をし、上場(IPO)を目指すベンチャー・スタートアップ企業でこそ、社外取締役・顧問の真価が発揮されるともいえるでしょう。なぜなら、経営陣と投資家の利害を一致させ、企業価値の向上を目指す役割を、社外取締役・顧問が果たすからです。

そのため、ベンチャー・スタートアップ企業の社外取締役は、その会社に投資しているベンチャー・キャピタルなどから派遣されることが多くあります。

 


【M&Aで売却した後のセカンドキャリアに】

社外取締役・顧問は、客観的に会社をみて意見・アドバイスを行い、経営課題を解決すること、あるいは経営戦略を実現することが本義です。

経営者はM&Aで会社を売却・譲渡するまで、ゼロイチの起業、もしくは先代から会社を継承して日々経営をしてきたわけですから、その業界に関する深い知識と経験をお持ちです会社を手放したからといって、そんな経験値を活用しないのはもったいないでしょう。同業でなく、他業界で応用し、これまでの経験を活かすこともできるのです

社外取締役・顧問を迎え入れる会社側としても、自社がすでに持っているリソースをベースに、社外取締役・顧問がこれまで培ってきた異業界の知見を組み合わせて、新規事業を立ち上げることができます。ほかにも、経営計画・事業計画の立案、営業戦略、IPO・CVC、多角経営化、業種転換、海外進出など、解決したい課題は多岐にわたるでしょう。経営課題に終わりはありません。

会社をM&Aで売却して引退した後は、セカンドキャリアとして社外取締役業・顧問業を始めてみるのも良いかもしれません

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

コラム一覧へ戻る