コラム

長引いた新型コロナウイルスの感染拡大は、インバウンドの後退や老舗旅館の廃業など、日本社会にも大きな影響を及ぼしました。リモートワークやサービスのオンライン化など、ライフスタイルの変化のきっかけにもなり、事業環境も大きく変わったといえるでしょう。また、大幅な売上減や休業を余儀なくされ、多大な損害が発生した事業者も少なくありません。そんななか「ゼロゼロ融資」と呼ばれる支援が行われ、一部の事業者は延命されました。このゼロゼロ融資の出口戦略に今、注目が集まっています

 


【ゼロゼロ融資とは】

ゼロゼロ融資とは、主に中小企業向けの政府系金融機関と民間金融機関からの融資について、事業者に代わって公的機関が3年間利子を負担し、最長5年間元金の返済を猶予する「実質無利子・無担保融資」のことです。新型コロナウイルス感染拡大によって売上が減少した企業を対象とする支援策・支援制度で、運転資金の枯渇や借入金の返済不能による倒産件数の増加を防止するために行われました。

ゼロゼロ融資は中小企業や個人事業主が対象となり、零細企業や個人事業主では最大6000万円、中小企業では最大3億円が実質無利子で融資を受けることができます。

返済が滞った場合は最大8割、または全額が信用保証協会によって保証される仕組みになっており、利息についても利子補給によって一定期間は国が企業の代わりに負担をしてくれます。

 


【ゼロゼロ融資の一例】

以下は、2020年3月以降に発表されたゼロゼロ融資の一例です。

 

◆新型コロナウイルス感染症特別貸付

日本政策金融公庫が受付を行うコロナ融資制度

融資金額の上限:零細企業は8000万円まで(うち6000万円までは金利の優遇措置を受けることができる)

中小企業は6億円まで(うち3億円までは金利の優遇措置を受けることができる)

借入期間:20年(運転資金、設備資金ともに)、うち据置期間5年以内

 

◆セーフティネット貸付

日本政策金融公庫が受付を行うコロナ融資制度

融資金額の上限:4800万円まで

借入期間:運転資金8年、設備資金15年、うち据置期間3年以内

 

◆新型コロナウイルス感染症対応資金

民間金融機関によるゼロゼロ融資(特別融資) ※2021年3月末で申込期間終了

融資金額の上限:6000万円まで

借入期間:10年(運転資金、設備資金ともに)、うち据置期間5年以内

 

◆新型コロナ感染症特別貸付

商工組合中央金庫が受付を行うコロナ融資制度

融資金額の上限:20億円まで

借入期間:運転資金15年、設備資金20年、うち据置期間5年以内

 


【懸念されるゼロゼロ融資の副作用】

これらの「ゼロゼロ融資」の利子補給の期限は3年間で、2023年以降は借入金に対して金利の負担が発生する事業者が続々と出てきます。そのため今後、ゼロゼロ融資の副作用として、返済負担に耐えきれない事業者や返済不能になる事業者が続出する懸念があります

さらに、連続倒産によってサプライチェーンの崩壊やさらなる連鎖倒産が起こり、本格的な不況となる懸念さえあります。また最近では、原油高や円安といった新たな問題も出てきているため、予想以上に事態は深刻と捉えた方が良いでしょう。

帝国データバンクのレポート(*1)には、

「コロナ禍による経済の急激な縮小や経営環境の変化により、多くの中小企業で業績が悪化した一方、持続化給付金をはじめとする政府の支援策に加え、全国 200 万件・40 兆円に上る無利子・無担保融資(コロナ融資)で資金繰りを下支えしてきた。そのため、「緊急事態宣言で人流を抑制することができれば」「ワクチン接種が進めば」という期待感から事業を継続してきた企業も多かった。しかし、度重なる緊急事態宣言などの人流抑制、景況感の低迷などで業績不振が長期化し、コロナ融資を運転資金などで既に使い切った企業は多い。こうしたなか、据え置き期間が終了し返済が始まるものの返済原資に乏しく、金融機関から追加の融資を受けることもできず、最終的に資金繰りに行き詰り事業継続を諦める中小企業の破たんが目立ち始めている」とあります。

*1)出典:「コロナ融資後倒産」、1年半で200件に到達 返済期限が迫り、あきらめ倒産相次ぐ ~ 飲食店など小売業、食品関係の業種で多く発生 ~|帝国データバンク(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220304.pdf)

 

追加融資を受けられる経営状態にあればまだ光は見えますが、八方塞がりという経営状況の企業も多いはずです。

 


【ゼロゼロ融資の出口戦略をどう描く?】

そんななか、ゼロゼロ融資の出口戦略として、M&Aを検討するケースが増えています。新型コロナウイルスの感染拡大、ウクライナ問題、原油高、円安…などの度重なる歴史的な出来事は、経営環境に大きな変化と影響を与えました。

現代はよく「激動の時代」「VUCA(*2)の時代」などと呼ばれますが、激動でなかった時代もVUCAでなかった時代もありません。時代は常に激動で不確実です。
*2)VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたアクロニム

不確実性の高いときは、買い手(譲受)企業は「確実に買えるうちに、買える会社・事業を買える価格で」、売り手(譲渡)企業は「確実に売れるうちに、売れる会社・事業を売れる価格で」という考えになります

多角経営化や業種転換を目指す際、いわゆる「ゼロイチ」の新規事業は不確実性が高まり、リスクも高まることになります。そのため、M&Aのようにある程度先が読め、計画を立てやすい手法が好まれるでしょう。そのような志向の買い手(譲受)企業は、今も積極的にM&Aを行っていますゼロゼロ融資を受けた自社の企業価値の算定やM&Aという出口戦略について、一度専門家に相談してみるのも一考です

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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