コラム

「M&Aで会社を売りたい」と考えたとき、頭をよぎるのは「本当に売れるのだろうか」という懸念ではないでしょうか。M&Aがスムーズに進むケースと、そうでないケースがあります。本稿では、M&Aで比較的売却しやすい会社の傾向について解説します

 


【M&Aで売れやすい会社「6つの傾向」】

「M&Aで売れやすい会社」とは、買い手(譲受)企業のニーズが高く、デューデリジェンスなどのM&Aのプロセスがスムーズに進むということを意味します。筆者がM&Aに関わってきてスピーディに譲渡が完了したのは、一言で言えば「オーナーチェンジだけで済む会社(事業)」ということになります。そんな会社(事業)には、以下の6つの傾向があると言えるでしょう。

 

  • 人手不足の業界
  • 取引先の分散ができている会社
  • ビジネスモデルがわかりやすい会社
  • 業界再編が進んでいる業界
  • 規制強化が行われている業界
  • 事業と関係のない不動産を持っていない会社

 

◆M&Aで売れやすいのは「人手不足の業界」

人手不足は、多くの業界で経営課題として挙げられています。マンパワーの不足やマネジメントができるエグゼクティブ人材の不足など、人手不足と言っても業界や会社によってさまざまですが、「採用に困っていない」「人材が全く辞めない」という会社は稀でしょう。そんななか、買い手(譲受)企業のニーズとして、人材確保のためのM&Aが進んでいます。例えば、IT業ではエンジニア人材の数、建設業であれば有資格者の数に対してのれん代が付く場合もあるほどです。

 

◆M&Aで売れやすいのは「取引先の分散ができている会社」

売上が特定の企業1社に集中していると、その1社に依存しており、取引中止による急激な経営悪化につながるリスクが高まります。そのため、取引先の分散ができており、多少の解約、取引中止があっても揺るがない基盤を築いている企業の方が買い手(譲受)企業には好まれる傾向があります

 

◆M&Aで売れやすいのは「ビジネスモデルがわかりやすい会社」

一社で複数の事業を展開している会社よりも、得意分野に事業を絞り集中している会社の方が、買い手(譲受)企業も検討しやすいようです。事業譲渡の場合、各契約書の書き換えなどの業務が生じるため、一社から事業を切り出す事業譲渡よりも株式譲渡の方が好まれることもあります。

 

◆M&Aで売れやすいのは「業界再編が進んでいる業界」

医療法人やクリニック、調剤薬局などの医療業界は、業界再編や世代交代が進んでいます。また、会計事務所や社会保険労務士事務所などの士業事務所も、世代交代が進んでいる業界の一つです。さらに、幼稚園や幼児教育教室、大学、語学学校などの教育事業、テクノロジー化が進む農業、一部の製造業(例えば、酒蔵、醤油蔵、味噌蔵など)、新型コロナの影響を受けた小規模旅館、ホテル他宿泊業なども業界再編が進んでいる業界と言えるでしょう。上記のような業界への新規参入や事業拡大の手段として、M&Aが活用されています

 

◆M&Aで売れやすいのは「規制強化が行われている業界」

法規制の強化によってM&Aが活発化するケースがあります。規制強化が行われると新規参入が難しくなり、既存の会社を買収することで参入しようとする買い手ニーズが高まるからです。

 

◆M&Aで売れやすいのは「事業と関係のない不動産を持っていない会社」

不動産価値は、都心などの一部を除いて下落傾向にあります。簿価よりも時価が下回るケースも多くあります。そのため、事業を続けていくうえで必要な不動産は別ですが、事業とは関係のない不動産はない方が売却しやすいでしょう。不動産に限らず、事業(本業)と関係のない資産を持っていると、M&Aがスムーズに進まないことがありますので注意が必要です。

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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