コラム

「M&Aは、大企業だからできることで自社には関係ない」と感じている中小企業経営者も多いのではないでしょうか。しかしその認識、実は間違っているかもしれません。小規模M&A(スモールM&A)は、少しずつ身近な存在になっています。本稿をお読みいただくことで、少しでも誤解を解消できればと思います。

 


【M&Aは大企業だけのものではない】

「M&Aは、大企業だからできること」「M&Aは、自分とは関係ない世界の話」など、M&Aは中小企業経営者にとっては、まだ当事者感が薄いのかもしれません。ですがM&Aは、一部の大手企業だけのものではなくなってきており、中小企業間でもすでに活発な取引が行われています

中小企業庁が発表した『第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命』*1 には、以下のように書かれています。

 

中小企業においても、新事業展開や商圏拡大等を目的として子会社・関連会社を設立する企業も多い。第2-6-8図は、買収・新設別に子会社を増加させた企業数の推移について見たものである。2006年度に比べると、子会社・関連会社の新設を行った企業数は減少しているのに対して、買収により子会社・関連会社を増加させた企業は約1.8倍と増加傾向にあることが見て取れる。中小企業において、新設による企業グループ化よりも、他社の買収を選択することが増えているといえる。

 

出典:2018年版 中小企業白書「第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命」|中小企業庁
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_6_2_2.html

 


【M&Aは敵対的買収や乗っ取り、ハゲタカではない】

ドラマや小説の影響もあってか、M&Aというと「敵対的買収」「乗っ取り」「ハゲタカ」などのネガティブなイメージが浸透しています。しかし、フィクションのような敵対的買収では話がまとまるはずもありません

M&Aが成約すると、経営権は買い手(譲受)企業に移りますから、「乗っ取り」といったイメージを持たれる方も少なくありません。しかし実際のM&Aは、双方が話し合いをした上で成立するため、決して乗っ取り行為ではないのです。

買い手(譲受)企業は、買収した事業や人材、資産などを「どのように活用するか」を検討します。あくまでも経営戦略のため、利益を追求するためにM&Aを行うわけです。売り手(譲渡)企業側も条件を提示することができますから、M&Aは乗っ取りではなく友好的な方法と言えるでしょう。

 


【売却理由は経営不振だけではない】

会社を売却する理由として「経営不振に陥ったから」というイメージを持たれている方もいらっしゃるでしょう。しかし、経営不振から逃れることだけがM&Aの目的とされるわけではありません

中小企業経営者が自社の売却を決断する理由はさまざまです。以下に、売却理由の例を挙げてみます

 

  • 後継者問題の解消
  • 他事業への投資
  • 経営者の体調不良
  • ノンコア事業の分離
  • 大手中堅傘下での経営
  • 大手中堅傘下での経営
  • 借入の不安解消
  • 法改正
  • 競争の激化
  • 市場の成長鈍化
  • 人材確保の困難
  • 海外でのんびりしたい
  • 人生観が変わった
  • 一旦、リセットしたい など

 


【売却を決断すればM&Aがスムーズに進むわけではない】

株式譲渡や事業譲渡が実行されるまでの間、売り手(譲渡)企業の経営者の心は揺れ動くことになります。

 

「会社を売るべきか、やっぱり売らないべきか」
「会社を売るなんて、社員たちに申し訳ないんじゃないか」
「自分が育ててきた会社を売るのは、なんだか経営者として負けた気分」

 

一度会社を売却すると決意したとしても、経営者の気持ちは揺れ動き、中には疲弊してしまうこともあります。そんなとき、本音で相談できる相手がいれば、どれだけ心強いでしょうか

M&Aアドバイザーは、結婚でいう仲人に近い存在です。また、M&A自体も、結婚によく似ていると言われています。社風や歴史も違う異文化の会社同士が一緒になるということは、異なる環境で育った2人が夫婦になるのと極めて似ているのでしょう。

良き相談相手としてM&Aアドバイザーと本音で話し合い、M&Aを成功させていただけたらと思います

 

*1参照 中小企業庁「2018年版 中小企業白書」(2018年)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/index.html

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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