コラム

M&Aの話を進めていくと、ある段階で「顔合わせ会談(トップ会談、トップ面談)」を行うことになります。買い手(譲受)企業、あるいは売り手(譲渡)企業として顔合わせ会談にのぞむ際、どのような点に注意が必要なのでしょうか?

 


【M&A交渉のスタートは顔合わせ会談から】

ノンネームシートや企業概要書を提示し、買い手(譲受)企業が買収の意向を示せば、売り手(譲渡)企業との顔合わせ会談に進みます。顔合わせ会談は、経営者同士の会談になることもあれば、経営者と事業責任者、財務責任者との会談になることもあります。

顔合わせ会談は、いわばM&A交渉のスタートです。M&Aはよく「会社同士の結婚」と表現されますが、顔合わせ会談は結婚でいうところの「お見合い初日」。まず優先すべきは、信頼関係の構築です。

買い手(譲受)企業側からは、売り手(譲渡)企業の経営者に会社や事業への想い、理念などについてお聞きしても良いでしょう。譲渡を希望する理由や、譲渡後の展望、希望について話を聞くのも良いと思います。

売り手(譲渡)企業側からは、買い手(譲受)企業の経営者に理念やビジョン、ミッション、今後の経営計画、事業に対する想いなどについてお聞きしても良いでしょう。顔合わせ会談時には、企業に関する詳細情報をすでに得ていることが多いですが、数字のデータや企業情報などだけではわからないことが会談で得られるはずです。

 


【顔合わせ会談で最も重要なのは「地ならし」】

前述のとおり、顔合わせ会談で最も重要なことは信頼関係の構築であり、「地ならし」とも言えます。

初めて会ったばかりなのに、「会社の資産はいくらですか?」「会社の売上と利益はいくらですか?」「社員との関係はどうですか?」などと口頭で聞くのは、お見合い初日に「総資産や貯金はいくらですか?」「年収はいくらですか?」「家族や親戚との関係は良好ですか?」と聞くようなものです。

直接口頭では聞きにくいと感じることは、M&Aアドバイザーに相談し、ヒアリングのタイミングや聞き方を話し合いながら進めるのが良いでしょう。

経営者にとって会社や事業は汗と涙と血の結晶であり、人生そのものであるということを忘れてはいけません

 


【顔合わせ会談の最後にはタスクや次の日程を明確にしておく】

顔合わせ会談の最後には、タスクや次の日程を明確にしておくと良いでしょう。

タスクとは、追加で確認が必要なことや、提出が必要な資料・データ・書類などのことです。場合によっては、新たに作成が必要な資料があるかもしれません。タスクの担当者や期限についても、できる限り明確にしておきましょう。

また、次の日程を仮でも決めておくとタスクが進みやすくなります。顔合わせ会談は、必ずしも1回で終わるわけではありません。経営者以外に、事業責任者や現場責任者、店長などと会うこともあるでしょう。何度かコミュニケーションを重ねていくなかで信頼関係が築かれ、「この人(企業)に自社を譲りたい」「この企業を譲り受けたい」という合意に至ります。

仲人役であるM&Aアドバイザーに相談しながら顔合わせ会談にのぞむこと、M&Aアドバイザーと連携しながら懸念点を洗い出し、対処していくことでM&Aの成功確率はグッと上がるでしょう。

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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