コラム

後継者不在に悩む経営者たちの課題解決手段となり得るのが、M&Aという出口戦略です。では、どのような業界でM&Aは盛んになっているのでしょうか。また、今後M&Aが盛んになるであろう業界は、どのような業界なのでしょうか

 


【M&Aが盛んな業界は?】

M&Aが積極的に行われている業界には、例えば以下のような会社があります。

警備会社
ビルメンテナンス、清掃業者
建材資材卸業者
人材派遣会社
運送会社
電気工事業者
内装業者
IT システム開発会社
医療法人、クリニック
調剤薬局

などです。これらの業種は、会社規模の大小にかかわらず積極的にM&Aが行われています

私も今から5年ほど前に、人材派遣会社の売却案件にかかわったことがありました。経営者は60歳の頃から後継者について考えていましたが、社内継承がうまく進まず、子どもが会社を継ぐという発想はもともとなかったため、70歳を過ぎてからM&Aによる出口を決断しました。ゼロから立ち上げた会社への愛着から、なかなか売却額の面で妥協できなかったようですが、社員や自分たち家族の未来を考えて決断できたそうです。

さまざまな業種で経営者の高齢化が進んでいます。帝国データバンクによる全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)*1では、約26万6000社を対象にした後継者不在調査の結果、全体の約61.5%に当たる約16万社が後継者不在という調査結果が出ています。

後継者不在は、中小企業にとって深刻な問題であり、多くの中小企業が存在する日本にとっても深刻な問題であると言えます。廃業を避けるため後継者育成は不可避ですが、親族が後を必ず継ぐとは限りません

事業を継続していくためには、M&Aで他社への引継ぎを検討することも必要でしょう。M&Aによって経営をバトンタッチしていくことは、経営者の英断であるとも言えます。

 


【今後M&Aが盛んになる業界】

今後、どのような業界でM&Aが盛んになっていくのでしょうか? 例えば、以下のような業界が考えられます。

資産管理会社
広告代理店
広告制作会社
キャンプ場、アウトドア関連会社
教育事業(幼稚園、幼児教育教室、大学、語学学校など)
農業
寺院
酒蔵、醤油蔵、味噌蔵
会計事務所、士業事務所
小規模旅館、ホテル他宿泊業

これらの業界は、いずれも人材不足に悩む業界です。後継者だけでなく、働き手も不足しています。そのため、人材獲得の手段としてM&Aが注目されているのです。

国家資格を持つ士業も、高齢化が進んでいる職業のひとつです。また、士業の主な顧客である中小企業は減少傾向にあり、競争が激化しています。さらに、人材不足による後継者不在も大きな課題です。そのため、大手グループの傘下に入り経営安定化を図る士業事務所のM&Aが活発に行われています

また、昨今の経済的な理由によって、M&Aを検討している会社も多くあります

小規模旅館やホテルなどの宿泊業界は、日本政府が掲げた観光立国の方針、そして東京オリンピック開催で活況を呈するはずでした。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響を直接的に受け、外国人観光客の激減で収益は大きく減退しています。宿泊業界の生き残り策として、これから多くのM&Aが行われるでしょう

*1参照 全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p211104.html

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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