コラム

いずれ社長がAIの時代が来るかもしれませんが、人間である限り、必ず引退の時期が訪れます
これまで引退を逃れた社長は誰一人存在しません。

社長の出口が必ずしもハッピーとは限りません。
承継問題で親子や親族が骨肉の争いをするのは珍しいことではありません。
その事実に目を背けたい気持ちはよく分かります。
では、どうすれば、幸せな出口を迎えることができるのでしょうか。

それは「選択肢」があるうちに、やるべきことをやることです。
先送りするほど選択肢は減り、不幸な出口となる確率が高まります。

社長の出口には大きく5つあります。それぞれ一長一短あり正解はありません。
まずはパターンを知り、イメージすることから始めるのが良いでしょう

 

 

① 「親族内承継」

M&Aの専門家ではありますが、本来理想の承継と考えています。
その理由は、中小企業経営において創業者一族の求心力はとても強い「経営力」となるからです。
ただし、時代の荒波を乗り越えることができる人材が親族内にいるとは限りません。
まずは、身内が継ぎたいと思わせる会社にすると思うことが、その第一歩です。

 

② 「従業員承継」

実力者の役職員がいれば理想ですが、譲渡代金を用意できない、借入の承継ができない等の金銭的課題が残ります。
最近では、地元金融機関が譲渡代金(退職金)の融資に応じるケースが増えてきており、今後に期待するところです。

 

③ 「上場」

比較的ハードルが低い「東京プロマーケット」という市場があります。
既に多くの老舗中小企業が上場しています。
その理由は様々ですが、選択肢の幅が広がるのは間違いありません。
また、人材採用、取引拡大、資金調達面などの副次的効果も期待できます。

 

④ 「外部承継・M&A」

М&A市場が盛り上がっていますが、第三者に譲渡することはそう簡単ではありません
社長に顧客やノウハウなどが紐づいており、社長不在でも経営が維持できる「仕組み化」が必要となります。ある日突然思い立って、第三者に譲渡できる訳ではないのです。

 

⑤ 「廃業」

結果として廃業を選択せざるを得ないケースは増加するはずです。
とはいえ、廃業するのも簡単ではありません。多くの中小企業が資産を処分しても、借入や買掛金、退職金支払が残ってしまうからです。廃業にも余裕を持った対策が必要です。

 

コロナという思いがけない事態が発生し、多くの中小企業が大変な局面にある状況ですが、いずれ対峙しなくてはいけない「社長の出口」を、前倒しで考える良い機会とも言えます。

社長の出口は、決してマイナスな話ではありません
前倒しで出口を決断した多くの経営者が人生を謳歌しています。
新たなビジネスを立ち上げることも可能です。
投資家や顧問として、若手経営者の育成することもやりがいある仕事です。
選択肢をイメージし、一歩行動に移すことが幸せな出口を実現できるきっかけになるはずです

 


齋藤 由紀夫
金融会社でサラリーマン生活を送った後、2012年に㈱つながりバンクを設立。
М&Aアドバイザー事業の傍ら、自ら小規模の事業投資・M&Aを実践。
損切り含めM&Aの投資とエグジットを経験。
現在は、ITベンチャー企業・複数のM&A会社の株主兼役員として経営参画中。

事業投資オンラインメディア「Z-EN」運営。
著書「スモールM&Aのビジネスデューデリジェンス実務入門」(中央経済社)
趣味は、企業価値評価、トレイルランニング、ゴルフ、盆栽

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