コラム
- M&A全般M&A前(プレM&A)M&A後(PMI)
M&Aの交渉を成功させるためのポイント(後編)
M&Aは会社の成長戦略の一つですが、交渉が難航することも少なくありません。売り手企業のオーナーとして、M&Aの交渉を成功させるためには、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか? 前編では、M&Aの目的、価格の評価、条件、リスクの4つについて解説しました。後編では、交渉術、交渉テクニック、交渉相手の理解、交渉の進め方の4つについて解説します。
目次
- M&Aの交渉術を磨く
- M&Aの交渉テクニック
- M&Aの交渉相手を理解する
- M&Aの交渉の進め方を計画する
- まとめ
1、M&Aの交渉術を磨く
M&Aの交渉術を磨くことは、成否を左右する重要な要素です。交渉においては、売り手企業と買い手企業の双方が譲れないポイントや相反する利益が存在するため、戦略的なアプローチが求められます。成功する交渉には、以下のポイントを抑えることが不可欠です。
情報収集と分析:
M&A交渉においては、情報が鍵を握ります。事前に相手や市場動向について詳細な情報収集を行い、それを分析することで、自社の立場をより確固たるものにすることができるでしょう。適切な情報収集は、交渉の強力な武器となります。
戦略の構築:
交渉を開始する前に、明確な戦略を立てることが重要です。自社の目的や目標、交渉の範囲を明確にし、それらに向かって進むための戦略を練っておきます。戦略は柔軟性を持ちつつも、自社の利益を最大化するためにしっかりと立ててください。
妥協点の把握:
交渉においては、売り手企業と買い手企業の双方が妥協しなければなりません。自社の利益を最大化するためには、どこで譲歩するかを的確に把握することが必要です。妥協点を見極めるためには、相手のニーズや動向を理解し、それに基づいて交渉の進行を考える必要があります。
コミュニケーションの重要性:
相手との良好な関係を築くためには、オープンで建設的なコミュニケーションが不可欠です。また、相手の立場や意見を尊重することも大切でしょう。良好なコミュニケーションが交渉の成功に直結することは言うまでもありません。
プロフェッショナリズムの維持:
交渉においては、常にプロフェッショナリズムを維持することが重要です。冷静かつ客観的に交渉を進めることが求められます。また、適切なタイミングで譲歩することも重要ですが、それが自社の利益を損なわないように注意することも必要です。
2、M&Aの交渉テクニック
M&A交渉におけるテクニックは多岐にわたりますが、いくつかの主要なテクニックがあります。
ウォーキング・アウェイ:
自社の交渉ポジションを強化するために、交渉を打ち切るという威嚇を行うテクニックです。荒療治のように効果を発揮することもありますが、使用すると信用を損なう恐れがあります。
バトル・オブ・アトリション:
長期間にわたる交渉を通じて相手を疲弊させ、自社の要求を通すテクニックです。相手が交渉から離脱するか、妥協するまで徹底的に交渉を続けることが必要ですが、強引なテクニックですのでオススメしません。
シリアル・スクリーニング:
複数の交渉相手と同時に交渉を進め、最終的に最も有望な相手と契約を結ぶテクニックです。これにより、自社の交渉ポジションを強化し、より有利な条件での合意を目指すことができます。ただし、同時進行はやり取りが増えますので疲弊することもあります。
3、M&Aの交渉相手を理解する
交渉相手を理解することは、M&A交渉において非常に重要です。相手やその経営陣の意図やニーズを把握することで、より効果的な交渉戦略を立てることができます。
相手の戦略と目標:
相手がどのような経営戦略を持ち、どのような目標を持っているのかを理解することは重要です。相手の戦略や目標が自社の提案とどのように合致するかを把握することで、交渉のポイントや優先順位をより明確にすることができます。
経営陣の動向と意図:
M&A交渉においては、相手の経営陣の動向や意図を正確に把握することが重要です。経営陣がどのような考え方を持ち、何を重視しているのかを理解することで、交渉の方向性や戦略を調整することができるでしょう。
企業文化や共通言語の違いへの対応:
M&A交渉においては、企業文化や共通言語の違いが交渉の進行に影響を与えることがあります。異なる企業文化や言語を理解し、適切に対応することで、円滑な交渉の進行を図ることができるでしょう。また、相手との信頼関係を築くためにも、企業文化や共通言語の違いに敏感に対応することが重要です。
4、M&Aの交渉の進め方を計画する
交渉の進め方を計画することは、M&Aの成功に不可欠です。計画的なアプローチによって、交渉のスムーズな進行やリスクの最小化が可能となります。以下は、交渉の進め方を計画する際のポイントです。
交渉のタイミングとスケジュール:
交渉を進めるタイミングやスケジュールを計画することは重要です。交渉相手や関係者の都合を考慮し、適切なタイミングで交渉を行うことで、円滑な進行を図ることができるでしょう。
交渉の手順とプロセス:
交渉の手順やプロセスを明確にしておきます。交渉の流れや各段階での役割分担を明確にし、関係者がそれぞれの役割を適切に果たせるようにすると良いでしょう。
リスク管理と対処策:
交渉には、さまざまなリスクが伴います。計画的なアプローチによって、これらのリスクを最小限に抑えることが重要です。リスクを事前に想定し、それに対する対処策を計画しておくことで、交渉のスムーズな進行を図ることができます。
関係者のコミュニケーション:
交渉に関わる関係者間のコミュニケーションを円滑に進めることも重要です。関係者間での情報共有や意見交換を促進することで、より効果的な交渉が可能となります。
5、まとめ
M&Aの交渉を成功させるためには、交渉術の習得、交渉テクニック、相手の理解、そして計画的な進行が欠かせません。これらの要素をバランスよく組み合わせ、状況に応じて柔軟に対応することで、M&Aを成功させることができるでしょう。M&Aにおける交渉は、単なる価格や条件の合意に留まらず、売り手企業と買い手企業の双方の利益を最大化し、持続可能な成長に繋がるパートナーシップの構築を目指すプロセスであることを忘れないようにしましょう。