コラム

売り手企業の資産の価値と買い手企業が支払う金額の差額には、のれん代が含まれています。のれん代は、売り手企業の将来の収益力やブランド力など、目に見えない資産(無形資産)の価値を表すものです。本稿では、のれん代が発生する仕組みと、企業価値を高く評価してもらうために売り手企業ができる3つのコツをご紹介します。

 

目次

  1. なぜのれん代は発生するのか?
  2. 企業価値を高く評価してもらうためには?
  3. のれん代と負ののれんの意味とは?
  4. まとめ

 

1、なぜのれん代は発生するのか?

M&Aの際に、買い手企業が支払う金額は「企業価値」と呼ばれます。企業価値とは、売り手企業の将来の収益を現在価値に割り引いたものです。
一方で、売り手企業の資産の価値は「純資産」と呼ばれます。純資産とは、売り手企業の資産の合計から負債の合計を引いたものです。このとき、企業価値と純資産の差額が「のれん代」となります。つまり、のれん代は、買い手企業が売り手企業の将来の収益力やブランド力など、目に見えない資産に対して支払う金額です。この目に見えない資産を、「無形資産」と呼びます。

 

 

2、企業価値を高く評価してもらうためには?

では、のれん代を含む企業価値を高く評価してもらうためには、売り手企業はどうすれば良いのでしょうか?ここでは、売り手企業ができる3つのコツをご紹介します。

企業価値を上げるために「将来の収益性を高める」

のれん代は、売り手企業の将来の収益力に基づいて決まります。したがって売り手企業は、将来の収益性を高めることで、のれん代を高く評価してもらうことができます。具体的には、以下のような方法があります。

 

市場シェアの拡大:
市場シェアを拡大することで、売り手企業の競争力や成長性をアピールできるでしょう。市場シェアの拡大には、新規顧客の獲得や既存顧客のロイヤリティ向上などの施策が必要です。

利益率の改善:
利益率を改善することで、売り手企業の収益性や効率性をアピールできます。利益率の改善には、コスト削減や価格戦略などの施策が必要です。

新製品や新サービスの開発:
新製品や新サービスを開発することで、売り手企業の革新性や付加価値をアピールできるでしょう。新製品や新サービスの開発には、市場調査や技術開発などの施策が必要です。

 

企業価値を上げるために「ブランド力を高める」

のれん代は、売り手企業のブランド力にも影響されます。ブランド力とは、売り手企業の商品やサービスに対する顧客の認知度や好感度を表すものです。ブランド力が高いと、買い手企業は、売り手企業の商品やサービスに対して高い価値を認める傾向があります。したがって売り手企業は、ブランド力を高めることで、のれん代を高く評価してもらうことができるでしょう。具体的には、以下のような方法があります。

 

広告や宣伝の強化:
広告や宣伝を強化することで、売り手企業の商品やサービスの認知度を高めることができます。広告や宣伝の強化には、メディアやSNSなどの活用が必要です。

口コミや評判の向上:
口コミや評判を向上することで、売り手企業の商品やサービスの好感度を高めることができるでしょう。口コミや評判の向上には、顧客満足度の向上や口コミ促進などの施策が必要です。

差別化や特徴付けの強化:
差別化や特徴付けを強化することで、売り手企業の商品やサービスの独自性や優位性をアピールできます。差別化や特徴付けの強化には、商品やサービスの品質や機能などの改善が必要です。

 

企業価値を上げるために「買い手企業との相性を高める」

のれん代は、買い手企業との相性にも影響されます。相性とは、売り手企業と買い手企業の事業や文化の親和性を表すものです。相性が高いと、買い手企業は、売り手企業とのシナジー効果を期待する傾向があります。したがって売り手企業は、買い手企業との相性を高めることで、のれん代を高く評価してもらうことができるでしょう。具体的には、以下のような方法があります。

 

買い手企業のニーズや課題の理解:
買い手企業のニーズや課題を理解することで、売り手企業の商品やサービスの付加価値を示すことができます。買い手企業のニーズや課題の理解には、市場分析や競合分析などの情報収集が必要です。

 

買い手企業のビジョンや戦略の共有:
買い手企業のビジョンや戦略を共有することで、売り手企業との方向性や目標の一致を示すことができるでしょう。買い手企業のビジョンや戦略の共有には、事前のコミュニケーションやプレゼンテーションなどの方法が必要です。

 

買い手企業の文化や価値観の尊重:
買い手企業の文化や価値観を尊重することで、売り手企業との信頼関係や協調性を示すことができます。買い手企業の文化や価値観の尊重には、組織や人事の整合性や柔軟性などの配慮が必要です。

 

3、のれん代と負ののれんの意味とは?

のれん代が発生するということは、買い手企業が売り手企業の資産の価値よりも高い金額を支払うということです。しかし逆に、買い手企業が売り手企業の資産の価値よりも低い金額を支払う場合もあります。このとき、買い手企業が売り手企業の資産の価値と支払う金額の差額を「負ののれん」と呼びます。

 

負ののれんは、売り手企業の将来の収益力やブランド力などが低いと判断されることを意味します。負ののれんが発生する場合は、売り手企業は買い手企業に対して、のれん代を高く評価してもらうための努力をする必要があるでしょう。また、買い手企業は、負ののれんを利用して、M&Aの価格交渉を有利に進めることができます。具体的には、以下のような方法があります。

 

負ののれんの原因の分析:
負ののれんの原因を分析することで、売り手企業は、自社の弱点や改善点を把握することができます。負ののれんの原因の分析には、財務分析や業界分析などの方法が必要です。

 

負ののれんの正当性の検証:
負ののれんの正当性を検証することで、買い手企業は、自社の見積もりや評価が妥当であることを証明することができるでしょう。負ののれんの正当性の検証には、市場比較法やディスカウントキャッシュフロー法などの方法が必要です。

 

負ののれんの交渉の戦略:
負ののれんの交渉の戦略を立てることで、売り手企業と買い手企業は、M&Aの価格について合意に達することができます。負ののれんの交渉の戦略には、BATNA(最善代替案)やZOPA(合意可能領域)などの概念の活用が必要です。

 

4、まとめ

このコラムでは、のれん代が発生する仕組みと、企業価値を高く評価してもらうために売り手企業ができる3つのコツをご紹介しました。のれん代は、売り手企業の将来の収益力やブランド力など、目に見えない資産(無形資産)の価値を表すものです。

売り手企業は、「将来の収益性を高める」「ブランド力を高める」「買い手企業との相性を高める」という3つのコツを実践することで、のれん代を高く評価してもらうことができます。また、負ののれんが発生する場合は、「負ののれんの原因の分析」「正当性の検証」「交渉の戦略」という3つの方法を用いることで、M&Aの価格交渉を有利に進めることができるでしょう。

M&Aは、売り手企業にとっても買い手企業にとっても重要な経営判断です。のれん代の理解と活用は、M&Aの成功に欠かせません。ぜひ本稿を、M&Aに役立ててください。「のれん代の交渉」については、別稿でご紹介したいと思います。

 

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