コラム

人材獲得の手法として、アクハイヤー(M&Aによる人材獲得)と採用はどちらが有効なのでしょうか? 本稿では、それぞれのメリットとデメリット、コストとリターン、組織文化と人材育成への影響を比較してみました。また、今後の動向や課題についても考察します。 

 

目次

  1. アクハイヤーと採用の違いとは?
  2. アクハイヤーと採用のバランスを考える
  3. アクハイヤーと採用のコストとリターンの比較
  4. アクハイヤーと採用の組織文化と人材育成の影響
  5. アクハイヤーと採用の未来の展望
  6. まとめ

 

1、アクハイヤーと採用の違いとは?

アクハイヤーと採用は、人材獲得の方法として似ているようで異なるものです。アクハイヤーは、買収(acquisition)と雇用(hiring)を組み合わせてつくられた造語で、人材獲得を主な目的として行うM&Aのことを言います。一方で採用とは、求人広告や面接、スカウトなどを通じて、個々の人材を雇用することです。

アクハイヤーのメリットとデメリット

アクハイヤーのメリットには、以下の点が挙げられます。
・優秀な人材やチームを一気に獲得できる
・新規事業や技術開発にスピード感を持って取り組める
・買収先のブランドや顧客基盤を利用できる

一方でアクハイヤーのデメリットには、以下の点が挙げられます。
・買収コストが高くなる可能性がある
・買収先の組織文化やビジョンとの融合に課題が生じる可能性がある
・買収先の事業が採算性に乏しい場合、事業売却や中止を余儀なくされる可能性がある


採用のメリットとデメリット

採用のメリットには、以下の点が挙げられます。
・自社のニーズに合った人材を選考できる
・採用コストを抑えられる可能性がある
・採用活動を通じて自社のブランディングや認知度を高められる

一方で採用のデメリットには、以下の点が挙げられます。
・採用活動に時間や労力、工数がかかる
・人材獲得の競争が激しい
・採用後の教育や育成にコストや労力がかかる

 

2、アクハイヤーと採用のバランスを考える

アクハイヤーと採用には、上記のようにそれぞれにメリットとデメリットがあります。どちらの方法を選択するかは、自社の事業戦略や人材ニーズに応じて判断する必要があるでしょう。例えば以下のような場合は、アクハイヤーを検討する余地があります。

・新規事業や技術開発に即戦力が必要な場合
・市場で優秀な人材が不足している分野に進出したい場合
・買収先に強みや付加価値がある場合

一方で以下のような場合は、採用を優先する余地があるでしょう。
・長期的な人材育成や組織文化づくりに重きを置きたい場合
・買収コストに見合うだけのリターンが見込めない場合
・自社のビジョンや価値観に共感する人材を求めている場合

 

3、アクハイヤーと採用のコストとリターンの比較

アクハイヤーと採用のコストとリターンは、雇用形態や求める人材のレベルによって異なりますが、アクハイヤーの方がコストもリターンも高くなることがあります。しかしアクハイヤーでは、買収先の企業価値や人材価値を評価し、適正な買収価格を提示する必要があります。

またM&A後には、買収先の事業や人材を自社に統合するためのコストも発生します。これらのコストは、採用活動にかかるコストよりも高くなる可能性もあります。しかしアクハイヤーでは、買収先の事業や人材を自社の成長戦略に活用することで、高いリターンを得ることができるでしょう。例えば、新規事業や技術開発にスピード感を持って取り組み、市場で優位に立つことができれば、すぐに投資費用を回収できる可能性もあります。

 一方の採用では、採用活動にかかるコストはアクハイヤーよりも低く抑えられる可能性がありますが、リターンも低くなる可能性があります。採用した人材が即戦力として活躍できるとは限らず、教育や育成に時間や労力がかかるからです。また、一人前に育った頃に退職してしまうリスクもあるでしょう。採用した人材が定着しない場合やパフォーマンスが低い場合は、採用コストが無駄になってしまう懸念があります。

 

4、アクハイヤーと採用の組織文化と人材育成の影響

アクハイヤーと採用は、組織文化や人材育成にもそれぞれ影響を与えます。アクハイヤーでは、買収先の組織文化やビジョンと自社の組織文化やビジョンとの融合が重要な課題となります。買収先の組織文化やビジョンが自社と相容れない場合は、買収先の人材が自社に馴染めない可能性があるでしょう。

その結果、買収先の人材の離職率が高くなったり、自社の組織風土が乱れたりするリスクがあります。そのため、アクハイヤーを行う際には、買収先の組織文化やビジョンを事前に把握し、自社との適合性を慎重に判断する必要があります。またM&A後には、買収先の人材に対して自社の組織文化やビジョンを伝えることや、両者のコミュニケーションを促進することも重要です。

採用では、自社のニーズに合った人材を選択できるため、組織文化やビジョンへの適合性は高くなります。採用活動を通じて自社の組織文化やビジョンを伝えることで、求職者に「この会社の人はこういう考え方や行動をしている」という印象を与えることができます。その結果、採用した人材が自社に馴染みやすくなるでしょう。しかし採用では、教育や育成が重要な要素です。採用した人材が即戦力として活躍できるとは限らず、自社の事業や技術について学ぶ必要があります。そのため採用後には、採用した人材に対して適切な教育や育成を行うことが必要です。また、採用した人材の能力やモチベーションを維持するためには、定期的なフィードバックや人事評価、キャリアパスの提供なども重要です。

 

5、アクハイヤーと採用の未来の展望

アクハイヤーと採用は、今後も人材獲得の重要な方法として存在し続けるでしょう。しかし世界は日々変化し、人材のニーズや市場の状況も変わっていきます。そのため、アクハイヤーと採用の手法も柔軟に変化させていく必要があります。例えば、以下のような点が考えられます。

アクハイヤーでは、買収先の企業や事業だけでなく、個人やコミュニティ、DAO(自律分散型組織)などの新しい対象を見つけることができるかもしれません。例えば、ソーシャルメディアやオンラインプラットフォームで活躍する個人やコミュニティ、DAOは、高い影響力や知名度を持っており、自社のブランドや事業に貢献できる可能性があります。

採用では、リモートワーク化やグローバル化に対応することができるかもしれません。例えばリモートワーク化によって、地理的な制約を超えて広く人材を探すことができるようになります。またグローバル化によって、多様な文化や価値観を持つ人材を受け入れることができるようになるでしょう。

 

6、まとめ

日本を市場に日本人同士だけで仕事をする時代は永遠には続きません。国籍や民族、言語を超えた多様性は、どの職場でも当たり前になっていくでしょう。アクハイヤーで人材獲得をするにせよ、採用で人材獲得をするにせよ、多様性を前提とした組織では、やはり組織文化やビジョンを伝えていくことが重要です。

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