コラム
- M&A全般
リスキリングとM&Aの必要性と可能性
時代の変化に対応するために必要な2つの戦略があります。
それは、社員に新しいスキルや知識を身につけさせるリスキリングと、外部から事業や技術を取り込むM&Aです。
本稿では、リスキリングとM&Aの関係や効果などについて解説します。
【リスキリングとは? 人材の再教育・再配置の必要性と効果】
リスキリングとは、時代の変化によって必要となる新しいスキルや知識を身につけることです。
リスキリングは、会社にとっても社員にとってもメリットがあります。
会社にとっては、競争力を高めることや人材の流出を防ぐことができます。
社員にとっては、キャリアの幅を広げることや、自己実現を図ることができるでしょう。
リスキリングが必要とされる背景には、主に2つの要因が考えられます。
一つは、デジタル化やグローバル化などによるビジネス環境の変化です。これにより、従来のスキルや知識だけでは対応できない新たな課題やニーズが生まれています。
例えば、AIやIoTなどの技術の発展によって一部の仕事が自動化されたり、新しい仕事が創出されたりしています。
また、国際的な取引や協業が増えたり、多様な価値観や文化に触れる機会が増えたりもしています。
これらの変化に対応するために、デジタルスキルやコミュニケーションスキルなどの新しいスキルや知識が求められているわけです。
もう一つは、働き方やライフスタイルの多様化です。これにより、社員のニーズや志向も多様化しています。例えば、コロナ禍でテレワークやフレックスタイム、ワーケーションなどの柔軟な働き方が広まったり、ライフイベントや自己啓発などの理由でキャリアチェンジを考える人が増えたりしています。
また、終身雇用制度や年功序列制度などの従来の雇用慣行も見直されているでしょう。
これらの変化に対応するためには、自分自身でキャリアをデザインし、必要なスキルや知識を習得することが求められています。
リスキリングを実施するためには、会社と社員双方の協力が必要です。
会社は、社員に必要なスキルや知識を明示し、教育プログラムを提供し、学んだスキルや知識を活用できる環境を整えることが求められます。
社員は、自分自身の強みや弱みを把握し、目標や計画を立て、主体的に学習し続けることが求められます。
リスキリングは、単なる教育ではありません。会社と社員が共に成長するための戦略です。
時代の変化に適応し続けるためには、リスキリングを常に意識し実践することが重要でしょう。
【M&Aのグローバル化とデジタル化がもたらす変化とチャンス】
M&Aは、市場シェアの拡大やコスト削減、新規事業の開拓や技術の獲得、経営資源の最適化やリスク分散など、経営戦略の一つとして活用されています。M&Aの動向を見ると、近年はグローバル化とデジタル化が大きな影響を与えています。
ビジネスのグローバル化により、国内市場だけではなく、今後はますます海外市場への進出や拡大が必要になっていくでしょう。
そのため、海外企業とのM&Aも増加していきます。
特に、アジアやアフリカなどの成長市場への参入や拡大を目指すM&Aが活発になっていくでしょう。
また、国内企業同士のM&Aにおいても、国内市場の縮小や競争激化に対応するため、業界再編や事業再構築を図る必要性が増すでしょう。
またデジタル化により、ビジネスモデルや顧客ニーズが変化しています。
そのため、デジタル技術やサービスを持つ会社とのM&Aが増加していくでしょう。
特に、ITや通信などのデジタル関連分野では、技術革新やイノベーションが加速しており、M&Aはその重要な手段となっています。
また、製造や小売などの従来型の分野でも、DXを推進するためにデジタル関連企業とのM&Aが増加しています。
M&Aは、グローバル化とデジタル化による変化に対応し、新たな市場やビジネスモデルを創出するためのチャンスです。
しかし、M&Aにはリスクも伴います。
例えば、買収価格の高騰や統合後のシナジー効果の不発、企業文化や制度の違いによる摩擦などが挙げられます。
そのため、M&Aを成功させるためには事前の調査や分析、交渉や契約、統合後のフォローアップなどを慎重に行うことが必要です。
【リスキリングとM&Aの関係】
リスキリングとM&Aは、時代の変化に対応するために必要な戦略です。
しかし、それぞれだけでは不十分であり、相互補完的な関係にあることを理解することが重要でしょう。
リスキリングは、社員に新しいスキルや知識を身につけさせることで、会社内部の競争力を高めることができます。
しかしリスキリングだけでは、市場や顧客のニーズに対応するために必要な事業や技術をすべて獲得することはできません。
そのため、M&Aを活用して、外部から事業や技術を取り込むことが必要です。
例えば、デジタル技術やサービスを持つ会社を買収することで、DXを加速させることができます。
M&Aは、外部から事業や技術を取り込むことで、会社の事業ポートフォリオを強化することができます。
しかしM&Aだけでは、統合後の社員のスキルや知識のレベルを保つことはできません。
そのため、リスキリングを実施して、社員に新しい事業や技術に対応できるスキルや知識を身につけさせることが必要です。
例えば、海外企業とのM&Aを行った場合は、社員に英語や異文化理解などのグローバルスキルを教育することができます。
リスキリングとM&Aは、それぞれが相手の弱点を補い合うことで、より効果的な戦略となるでしょう。
リスキリングは、M&Aによって取り込んだ事業や技術を活かすための基盤となります。
またM&Aは、リスキリングによって習得したスキルや知識を活用するための機会となります。
【リスキリングとM&Aが新たな市場やビジネスモデルを創出する?】
リスキリングとM&Aは、時代の変化に対応するために必要な戦略ですが、それだけではありません。
新たな市場やビジネスモデルを創出するための可能性でもあります。
新たな市場やビジネスモデルを創出するためには、既存の枠組みや常識に囚われず、創造的な発想や挑戦的な行動が必要です。
そのためには、多様な視点や知識を持つ人材が集まり、協力し合うことが重要でしょう。
リスキリングとM&Aは、そのような人材の集合体を形成するための手段です。
リスキリングは、社員に新しい視点や知識を与えることで、創造的な発想や挑戦的な行動を促すことができます。
M&Aは、外部から多様な視点や知識を持つ人材を取り込むことで、協力し合うことができます。
時代の変化に対応し続けるためには、リスキリングとM&Aを常に意識し、必要に応じて実践していくことが求められます。
中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。