コラム

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用して会社のビジネスモデルや価値提供の仕方を変革することです。M&Aは、DXを推進する上で有効な手段の一つです。しかし、M&AとDXはそれぞれに困難やリスクが伴います。そこで、M&AとDXを融合させることで、より効果的かつ効率的に事業変革を実現する方法が注目されています。本稿では、M&AとDX、2つの戦略について解説します。

 


【M&AとDXのシナジー】

DXとは、デジタル技術を活用して、会社のミッションを達成するために、企業文化、組織、業務プロセス、それを支える仕組みなどを変革し、競争上の優位を達成することです。DXは、単にITシステムの更新や効率化ではなく、ビジネスモデルや価値提供の仕方を根本的に見直す必要があります。そのためには、自社だけでなく、外部のパートナーとの連携や協業が不可欠です。

M&Aは、DXを推進する上で有効な手段の一つです。M&Aによって、自社にないデジタル技術やノウハウを獲得したり、新たな市場や顧客層にアクセスしたり、競合他社との差別化を図ったりすることができます。また、M&Aは、自社の組織や文化に刺激を与えて、変革意識やイノベーション精神を高める効果もありますし、そもそもDXを含めた仕組み化ができていないとM&Aは成就しにくいとも言えます。

M&Aは、成功させるのが容易ではありません。買収対象の選定や評価だけでなく、買収後の統合やシナジーの実現にも多くの課題が伴います。特に、デジタル技術を活用したM&Aでは、買収対象と自社のビジネスモデルや文化の違いが大きく、統合の難易度が高まります。また、デジタル技術は日々進化しており、買収時点で有効だった技術がすぐに陳腐化する可能性もあります。
そこで、M&AとDXの相乗効果を最大化するためには、以下のポイントに注意する必要があるでしょう。

 

・M&AはDXの戦略的な手段であることを忘れずに、自社のミッションやビジョンに沿った買収対象を選ぶこと。
・買収対象のデジタル技術やビジネスモデルだけでなく、その背景にある顧客ニーズや市場動向を理解し、自社との相性や将来性を評価すること。
・M&A後は、速やかに統合計画を策定し実行すること。統合プロセスでは、買収対象の強みや特徴を活かしつつも、自社との調和や連携を図ること。
・M&Aだけでなく、自社内でもDXを推進すること。買収対象と自社との間でデジタル技術やノウハウの共有や交流を促進し、相互学習やイノベーション創出につなげること。

 

このように、M&AとDXは互いに補完し合う関係にあります。M&AはDXを加速させるとともに、DXはM&Aの価値を高めるでしょう。しかし、そのためには、M&AとDXを一体的に捉え、戦略的かつ実行的に取り組むことが必要です。M&AとDXの相乗効果を最大限に引き出すことで、デジタル時代における企業の成長と競争力を確保することができます。

 


【事業継続性と競争力を高めるためにM&AとDXを融合させる】

会社は事業継続性と競争力を高めるために、M&AやDXなどの戦略的な取り組みを検討する必要があるでしょう。しかし前述のとおり、M&AやDXはそれぞれに困難やリスクを伴います。そこで、M&AとDXを融合させることで、より効果的かつ効率的に事業変革を実現する方法が注目されています。
M&AとDXの融合とは、M&Aを通じて自社にないデジタル技術やノウハウを獲得し、自社のビジネスモデルや価値提供の仕方を変革することです。
また、自社が持つデジタル技術やノウハウを買収対象に提供し、買収対象のビジネスモデルや価値提供の仕方を変革することも含みます。このようにして、M&AとDXのシナジーを最大化することで、事業継続性と競争力を高めることができます。

M&AとDXの融合には、以下のようなメリットがあります。

 

・M&Aによって自社にないデジタル技術やノウハウを短期間で獲得することができる。
・M&Aによって新たな市場や顧客層にアクセスすることができる。
・M&Aによって競合他社との差別化を図ることができる。
・DXによって自社や買収対象のビジネスモデルや価値提供の仕方を変革することができる。
・DXによって自社や買収対象の業務プロセスやコスト構造を改善することができる。
・DXによって自社や買収対象の顧客満足度やロイヤリティを向上させることができる。

 

しかし、M&AとDXの融合には、以下のような課題もあるでしょう。

 

・M&Aでは買収対象の選定や評価だけでなく、買収後の統合やシナジーの実現にも多くの課題が伴う。
・DXでは自社や買収対象の組織や文化の変革だけでなく、デジタル技術の選択や導入にも多くの課題が伴う。
・M&AとDXでは自社や買収対象のビジネスモデルや価値提供の仕方が大きく異なる場合があり、その調整や融合には時間とコストがかかる。
・M&AとDXではデジタル技術の進化に対応するために、常に最新の情報や知識を入手し、柔軟に変化する能力が求められる。

 

以上のように、M&AとDXの融合は、事業継続性と競争力を高めるための有効な手段ですが、同時に多くの課題を抱えています。
そこで、M&AとDXの融合を成功させるためには、以下を参考にするとよいでしょう。

 

▼M&AとDXの融合は、自社のミッションやビジョンに基づいて行うこと

M&AとDXは目的ではなく手段であることを忘れずに、自社がどのような価値を提供したいか、どのような市場や顧客に向けて提供したいかを明確にすること。

 

M&AとDXの融合は、買収対象との相互理解と信頼関係を築くこと

買収対象のデジタル技術やビジネスモデルだけでなく、その背景にある顧客ニーズや市場動向、組織や文化も理解し、尊重すること。また、自社も買収対象に対してオープンかつ透明に情報や意見を共有し、協力的な姿勢を示すこと。

 

M&AとDXの融合は、統合計画を策定し実行すること

統合計画では、自社と買収対象のビジネスモデルや価値提供の仕方をどのように変革するか、どのようなシナジー効果を期待できるか、どのようなリスクや課題があるかを明確にすること。また、統合プロセスでは、自社と買収対象の間でデジタル技術やノウハウの共有や交流を促進し、相互学習やイノベーション創出につなげること。

 

M&AとDXの融合は、継続的に評価し改善すること

統合後も定期的にM&AとDXの成果や効果を測定し分析すること。また、デジタル技術や市場環境の変化に対応するために、統合計画やビジネスモデルを柔軟に修正すること。

 

このように、M&AとDXの融合は、事業継続性と競争力を高めるためには欠かせない戦略ですが、その実現には多くの努力が必要です。
M&AとDXの融合を成功させるためには、自社だけでなく買収対象とも協力し合いながら、戦略的かつ実行的に取り組むことが必要です。

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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