コラム

M&Aには、事業拡大や競争力強化、事業継承など、さまざまな目的があります。しかし、M&Aは成功するとは限りません。M&Aには、相手企業の選定や評価、交渉や契約、統合後の経営など、多くの課題があります。では、中小企業のM&Aはどうすれば成功するのでしょうか? 本稿では、とある飲食店と製造業のM&Aの成功事例をご紹介します。

 


【中小企業のM&Aはどうすれば成功するのか?】

中小企業のM&Aを成功させるためには、以下の3つの要素が重要と言われています。

 

▼中小企業M&Aを成功させる要素「相性

相手企業との相性は、M&Aの成否を左右します。相手企業とは、経営方針や将来のビジョン、企業文化や価値観などが合致していることが望ましいでしょう。また、相手企業との信頼関係を築くことも大切です。信頼関係があれば、交渉や契約がスムーズに進みますし、統合後も協力し合い、建設的な議論ができます。

 

▼中小企業M&Aを成功させる要素「評価

相手企業の評価は、M&Aの対価や条件を決める上で重要です。相手企業の評価には、財務分析や市場分析だけでなく、非財務的な要素も考慮する必要があります。非財務的な要素とは、人材や技術、顧客やブランドなどの無形資産です。これらの要素は、相手企業の将来的な収益力や成長性を示す指標となります。

 

▼中小企業M&Aを成功させる要素「統合作業(PMI

M&Aが成立した後も、統合作業(PMI)によるシナジー効果を発揮するためには、両社の組織やシステム、企業文化などを適切に統合する必要があります。統合には、両社の従業員や顧客へのコミュニケーションや教育が欠かせません。また、統合後も定期的に評価やフィードバックを行い、問題点や改善点を見つけて対策することも大切です。

 


【中小企業M&Aの成功事例:飲食店】

この事例では、飲食店A店が飲食店B店を買収したケースをご紹介します。

売り手(譲渡)企業B社
B社は東京都内で日本食店を展開している会社です。創業から30年以上経ちますが、近年は売上が減少傾向にあります。B社の経営者は、自身の高齢化や後継者不在、競争激化などの理由で、事業継承のためにM&Aを検討するようになりました。

買い手(譲受)企業A社
A社は神奈川県内で日本食店を展開している会社です。創業から15年ほどで、現在は約50店舗を運営しています。A社の経営者は、事業拡大のためにM&Aを積極的に行っており、近年は東京都内への進出を目指していました。

 

▼M&Aの目的・背景

B社は事業継承のためにM&Aを検討していましたが、自社と相性の良い相手企業を見つけることができませんでした。そこで、B社はM&Aアドバイザーに相談し、A社とのマッチングを実現しました。

A社は事業拡大のためにM&Aを検討していましたが、東京都内では自社と競合する日本食店が多く、買収対象となる企業が少なかったです。そこで、A社はM&A仲介会社に相談し、B社とのマッチングを実現しました。

両社は、日本食店という同じ業態ではあるものの、地域や客層が異なることから、互いに競合しないことや、シナジー効果が期待できることをトップ会談で認識しました。また、両社の経営者は同じ世代であり、経営方針やビジョンも共通していました。これらの要因から、アドバイザー視点でも両社は相性が良いと感じました。

 

▼M&Aの手法・成果

両社は株式譲渡によるM&Aを行いました。A社はB社の全株式を取得し、B社はA社の完全子会社となりました。買収額は非公開ですが、B社の売上高の約1.5倍程度でした。

M&A後、両社は統合に取り組みました。A社はB社の店舗や従業員をそのまま継承し、ブランド名やメニューなども変更しませんでした。これは、B社の顧客や地域への配慮からです。また、A社はB社の従業員に対して教育やコミュニケーションを行い、両社の企業文化や価値観を共有しました。

これにより、売り手(譲渡)側であるB社は事業継承を成功させることができました。B社の経営者はA社の役員として残りましたが、日々の経営からは退きました。B社の従業員は、A社に引き続き雇用されています。一方、買い手(譲受)側であるA社は、事業拡大を成功させることができました。その後A社は、東京都内に約20店舗を新規出店しています。B社から得たノウハウや顧客データを活用することで、売上や利益も向上させることができました

 


【中小企業M&Aの成功事例:製造業】

次の事例では、製造業A社が製造業B社を買収したケースをご紹介します。

売り手(譲渡)企業B社
B社は埼玉県で自動車部品を製造している会社です。創業から40年以上が経ちますが、近年は技術革新や環境規制などに対応できず、売上や利益が低迷しています。B社の経営者は、自社の技術力や設備を活かすためにM&Aを検討するようになりました。

買い手(譲受)企業A社
A社は群馬県で電気自動車を製造している会社です。創業から10年ほどですが、現在は約1000人の従業員を抱えています。A社の経営者は、電気自動車市場の拡大に伴い、自社の生産能力や品質を向上させるためにM&Aを検討していました。

 

▼M&Aの目的・背景

B社は自社の技術力や設備を活かすためにM&Aを検討していましたが、自動車部品市場は縮小傾向にあり、買収対象となる企業は限られました。そこで、B社はM&A仲介会社に相談し、A社とのマッチングを実現しました。

A社は自社の生産能力や品質を向上させるためにM&Aを検討していましたが、電気自動車市場は拡大傾向にあり、買収対象となる企業が高値になっていました。そこで、A社はM&A仲介会社に相談し、B社とのマッチングを実現しました。

両社は、自動車関連という同じ業界でしたが、製品や技術は異なることから、互いに競合しないことや、シナジー効果が期待できることを認識しました。また、両社の経営者は年代は異なるものの類似するビジョンを持っており、電気自動車市場の発展に貢献したいという思いがありました。これらの要因から、両社は相性が良いと感じました。

 

▼M&Aの手法・成果

両社は株式交換によるM&Aを行いました。A社はB社の全株式を取得し、B社はA社の完全子会社となりました。株式交換比率は非公開ですが、A社の株価が高かったことから、B社の株主に有利な条件で落ち着きました。

M&A後、両社は統合に取り組みました。A社はB社の工場や従業員をそのまま継承しましたが、製品や技術などは変更しました。これは、B社の自動車部品を電気自動車用に改良するためです。また、A社はB社の従業員に対して教育やコミュニケーションを行い、両社の技術やノウハウを共有しました。

これにより、売り手(譲渡)側であるB社は自社の技術力や設備を活かすことができました。B社の自動車部品は電気自動車用に改良され、A社の製品の品質や性能を向上させることができました。また、B社の従業員もA社に引き続き雇用され、新たな技術や市場に挑戦することができました。一方、買い手(譲受)側であるA社は自社の生産能力や品質を向上させることができました。A社はB社の工場を活用することで、電気自動車の生産量を増やすことができています。また、A社はB社から得た技術やノウハウを活用することで、電気自動車のコストや環境負荷を低減させることもできました。

 

このように、M&Aは中小企業にとっても有効な経営戦略・出口戦略の一つです。しかし、M&Aには相性や評価や統合作業など、多くの課題があります。M&Aに成功するためには、事前の準備やM&A仲介会社・アドバイザーの活用などが重要です。M&Aを検討している方は、一度M&A仲介会社やアドバイザーに相談してみると良いでしょう。

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

コラム一覧へ戻る