コラム

M&Aは、オーナー社長の人生に大きな影響を与えることになります。M&A後に破産しないためには、どのようなライフプランニングや資産運用をすべきなのでしょうか? 本稿では、M&A後の人生やゴールベース・アプローチの考え方についてご紹介します。

 


【M&A後も人生は続く】

M&Aは、オーナー社長にとって重要な出口戦略です。しかしM&A後には、新たな課題が待っています。例えば、

・M&Aで得た譲渡益の税金対策
・M&A後の自分の役割や生きがいの見直し
・M&A後の家族や社員との関係の変化

などです。これらの課題に対処するためには、「M&A後も人生は続く」ということを忘れずに、自分の将来の目標や夢を明確にすることが大切です

M&Aで会社や事業を譲渡した人が、その後どのような生き方をするかは、個人の価値観や目標によって異なります。一般的には、以下のようなパターンが考えられます。

▼完全リタイア生活

M&Aで得た譲渡益で、自由な時間を楽しむ生活です。趣味や旅行、ボランティアなどに打ち込むことができます。しかし、完全なリタイア生活には退屈や孤独、生きがいの喪失などのデメリットがあります。リタイア生活をリタイアする人も多いのが実状です。

連続起業

M&Aで得た譲渡益を元手に、新たな事業に挑戦する生活です。起業家としてのスキルや経験を活かし、自分の夢やビジョンを実現することができます。しかし、連続起業にはリスクやストレス、責任も伴います。

▼専業投資家

M&Aで得た譲渡益を資産運用して生活します。株式や不動産、金融商品などに投資し、収益を得ることができます。しかし、資産運用には市場変動や空室リスク、税金などの心配事もあります。

▼顧問として会社に残る

M&Aで譲渡した会社や事業に顧問として関わる生活です。自分の経験や知識を後継者や社員に伝えることができます。しかし、顧問として残るには買い手(譲受)企業側との合意が必要であり、自分の権限や役割が変わることもあります。

▼転職して会社員になる

M&Aで譲渡した会社や事業とは別の会社に就職する生活です。自分のスキルやキャリアを活かし、安定した収入や福利厚生を得ることができます。しかし、会社員になるには就職活動が必要であり、経営者から一般社員になることに抵抗感があるかもしれません。

 

M&Aで会社や事業を売却したらそれで終わりではありません。その後も人生は続きます。そのため、「その後」を想定しておくことは非常に重要です。M&A後の人生を想定しておくことのメリットには、以下のようなものがあります。

◇人生設計を明確にすることができる

M&A後の自分の目標や夢、ライフスタイルを考えることで、自分の人生設計を明確にすることができます。自分の人生設計に沿ったM&Aの方法や条件を選ぶことができます。

◇M&A後の資産運用を計画的に行うことができる

M&Aで得た譲渡益は、税金やインフレ、支出などで減少していきます。M&A後の自分の必要な資金や期間を考えることで、資産運用を計画的に行うことができます。

◇M&A後の自分の役割や生きがいを見つけることができる

M&Aで会社や事業を売却した後は、自分の役割や生きがいが変わることもあります。M&A後の自分の役割や生きがいを見つけることで、精神的な満足感や幸福感を得ることができます。M&A後の自分の役割や生きがいは、自分の価値観や興味に基づいて決めることが大切です。

 


【M&Aで得た譲渡益が早急に溶けてしまう理由】

M&Aで会社や事業を売却した場合、譲渡代金としてまとまったお金を得ることになります。このお金は、株式譲渡や事業譲渡によって生じた譲渡益と呼ばれるもので、譲渡代金から取得費や手数料を差し引いたものです。

M&Aで得た譲渡益は、宝くじに当たったようなものとも言えるかもしれません。しかし宝くじと違って、M&Aで得た譲渡益は、これまでの自分の努力や経験に基づいて築き上げた会社や事業の価値を反映したものです。その意味では、あぶく銭ではありません。

しかしM&Aで得た譲渡益は、一般的な所得とは異なり、一度きりの特別な収入です。そのため、税務上も特別な取り扱いがされます。個人が株式を売却した場合は、譲渡所得として所得税(15.315%)と住民税(5%)が課されます。法人が事業を売却した場合は、法人税(約30%)が課されます

M&Aで得た譲渡益は、税金を支払った後でも大きな金額になることが多いでしょう。しかし、その分浪費したり、怪しい投資勧誘に乗ってしまったりします。例えば、以下のような点に注意が必要です。

▼ライフスタイルの変化

M&Aで得た譲渡益を使って豪華な住宅や車を購入したり、高級レストランや旅行に出かけたりすることで、生活水準が上がります。しかし、これらの支出は一時的ではなく継続的に発生するものです。そのため、収入が減少した後でも同じライフスタイルを維持しようとすると、譲渡益が早く消費されてしまいます。

▼投資詐欺

M&Aで得た譲渡益を有効に運用しようとする人は多いです。しかし、その際に注意しなければならないのは、投資詐欺に引っかからないことです。投資詐欺とは、高利回りや安全性を謳ってお金を集めるものの、実際には投資先が存在しなかったり、不正に横領されたりする詐欺行為です。投資詐欺は巧妙に仕組まれており、被害に遭った場合は、譲渡益を一気に失うことになります。

▼相続税

M&Aで得た譲渡益は、相続税の課税対象となる財産の一部です。そのため、相続人が多い場合や、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合は、相続税が課されます。相続税の税率は10%から55%までと高く、譲渡益の一部を納税する必要があります。

 


【M&A後こそゴールベース・アプローチが必要】

M&A後に破産しないためには、「ゴールベース・アプローチ」という資産運用の考え方を取り入れることがオススメです。ゴールベース・アプローチとは、個人やその家族の将来の夢を実現するために、そのゴールを具体化・明確化して、そこから逆算して必要な資金の確保や投資、支出コントロールなどを行う資産運用・管理の考え方です。ゴールベース・アプローチでは、以下のようなステップを踏みます。

① 自分の将来の目標や夢を明確にする。
② 目標や夢毎に必要な資金や期間を算出する。
③ 資産を目標や夢毎に分類し、それぞれに適したリスク・リターンのバランスを考える。
④ 分類した資産をそれぞれに適した商品やサービスで運用する。
⑤ 定期的に目標や夢の進捗や資産の状況を確認し、必要に応じて見直しや調整を行う。

ゴールベース・アプローチを実践することで、M&A後の人生をより豊かに楽しむことができるでしょう。M&Aは、人生の終わりではなく、新たな始まりです。M&A後に破産しないために、ゴールベース・アプローチをぜひ試してみてください

 

例えば、次のようなゴールを設定することができます。

・M&Aで得た譲渡益を使ってマイホームを購入したい
・子どもの教育資金として10年後までに500万円を用意したい
・老後の生活資金として65歳までに1000万円を確保したい
・海外旅行の資金として5年後までに300万円を用意したい

ゴールベース・アプローチでは、これらのゴールに必要な金額や期間を明確にし、現在の資産状況や収入見通し、リスク許容度などを考慮しながら、運用計画を立てて投資を実行します。運用成績よりも目標の達成を重視する手法で、長期的な運用に適しています。

 

M&A後のライフプランニングや資産運用については、専門的な知識や経験を持つアドバイザーに相談することをオススメします。ゴールベース・アプローチという考え方を理解し、信頼できるアドバイザーと協力しながら計画的な資産運用を行ってください。

 


中島 宏明
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。
プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。
2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、上場企業や会計事務所など複数の企業で経営戦略チームの一員としてM&Aや海外進出等に携わるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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